2010年3月30日 午後その2




大井川の川幅は広くなったり狭くなぅたり。








 ここ大井川の国道沿いには茶畑が多い。そのきちんと整えられた茶畑に誘われるかのように路地に入っていった。カミさんへのみやげに、お茶でも買っていこうと。
 しかし国道沿いにはお茶の販売店は数多くあるものの、茶畑の路地に店はない。そりゃそうだわな、田んぼに米屋がないのといっしょだ。
 バイクでうろついていると、地元らしきバアさまがおった。すかさず販売店を尋ねてみると、ササッとバッグからケイタイを取り出し、
 「“品川”から来たバイクのニイさんが、お茶ほしいって・・・」 知人のお茶屋に電話してくれた。品川ナンバーだからといって品川から来たわけじゃあないけど、まあ細かいことは別にしてありがたい。
 「次の角を右行って次をつつっと行って、、、分からんかい? じゃあ着いてきて・・・」
 バアさま、軽トラにサクッと乗ってバンッとドアを閉めて走り出す。GSFを後ろにしたがえて。。。
 もう80の歳にはなるだろうとお見受けしたが、なんと粋なバアさまだろうか。東京にはおらんな、お茶のパワーなのかな。





 粋なバアさまに先導されて着いたのが、お茶農家と販売店(店ではなく事務所かな)を営む相藤園(あいとうえん)。なかに入るとさっそくおネエさん(ややサービス表現)が「新茶は5月中旬からで、まだなんですよ〜」と言いながらお茶を入れてくれた。
 「美味いですね〜」 お世辞抜きでそう思った。すかさずおネエさんが黒い3つの大きな器に、それぞれ異なるお茶をバサーっと入れて、
 「100gで800円、2000円、3000円、さて今飲んでいただいたのどれでしょうか?」と。
 そんなの分かるわけない。でもほんとに美味かったので、飲んだお茶を売っていただこうと言ったら、
 「あ〜、それ3000円のでしたぁ。でも800円のもおいしいですよぉ〜」 だって。
 美味い!と言ってしまったあとにずっと安い800円のをください、なんて品川?のバイク乗りとしては言えないのだ。なかなかやるな、ネエさん・・・。


さてそれでは皆さま、800円・2000円・3000円のお茶は、ABC、どれでしょう・・・?
※正解してもプレゼントはありません。あしからず。



答:A-二千円、B-八百円(里の彩)、C-三千円(茶匠)。ちなみに八百円のお茶でも十分美味かったのです。





 お茶も飲んだし買ったしで、相藤園を後にする。茶畑の路地から国道に戻り、交通量の少ないのをこれ幸いとGSFのエンジンを唸らせる。道沿いにポツンポツンと咲く桜が美しい。
 少し走ればセンターラインもないワインディングロードとなるが、ますますスロットルワイドオープン。まんざらでもないな、我がコーナリング! と自己満足の世界で快走。
 やがて大井川鉄道に合流。おっ、鉄橋だ。午前に家山で見送ったC10の引く列車が終点千頭(せんず)を折り返してくるはずだ。もう2時近くで、昼飯も食わず腹が減って仕方がないが、ここでもう一丁ヤツを撮っておこう。できれば我が愛車GSFとSLとのツーショットをねえ。

道路上の橋から鉄橋を眺める。逆光だな、向こう側に下りてみようかな。


ここならいいだろう。おっ、元・南海電気鉄道特急、21000系ズームカーがやってきた。幸いにもGSFとのテスト撮影完了。なお、この場所に同業者は、ほかに一人のオッサンしか見当たらなかった。もっといい場所があるのだろうか。

















 C10やC11のようなタンク式機関車はテンダー式大型機(水と石炭を積む炭水車を後部に連結)とちがって、バック運転も得意とする。が、やはり前に向いていたほうがカッコいいなあ。

 写真を撮り終わると、すぐそばで木を切っていた地元のジイさまが近寄ってきて「これナナハンかい?」と私に話しかける。今や懐かしい言葉だ、ナナハンてのは。1969年にCB750Fourが発売されて40年を過ぎている。その頃は全国の国鉄路線に、まだ蒸気機関車が現役で走っていたのだ。
 大型バイク=ナナハンと考えるジイさまに「いやあ、センニヒャクです、これは」と答えると、「ほぉ〜そうかい、そうかい」。つづけて「こないだの土曜日と日曜日は、そんりゃあおおぜい汽車の写真を撮りに来とったなあ。今日はあんたらだけだぁ〜」 そして先ほどのお茶畑の軽トラバアさまのように「はぁ〜品川からかい・・・」



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