2008年10月24日



 10月24日、朝起きてみればやはり雨。この旅のメインとも言える十和田湖周辺に、昨日からまったく太陽が出ない。ほんとうに残念なことである。
 蔦温泉には隣接する蔦七沼と称される湖沼群の内、六つの沼を巡ることができる遊歩道がある。それはブナの森に囲まれた美しい紅葉の景色が広がると聞くが、この雨では行く気にならない。せっかくこの湯のお陰で、カミさんの打ち身・ねんざもだいぶ治まったというのに。(この時点ではそう思っていた)
 昨晩、宿の仲居さんが言っていた。「あら、売店で水を買っちゃったのぉ? もっと美味しい水、玄関の横に出てるのにぃ。ブナの森からのほんとうに美味しい湧き水がね、タダでね」 ペットボトルの飲みかけの有料の水を捨てて、八甲田の湧き水を入れて出発。




 昨日と同じように奥入瀬(おいらせ)渓谷を通り抜け、十和田湖に出る。右に湖面が見えるも、容赦なく降り続く雨なので素通り。外輪山を抜け、ひたすら東北を南下する。やがて東北自動車道の十和田インターの案内標識が見える。さて入るが入るまいか・・・。
 今夜の宿は、宮城県の鳴子温泉。こんな雨の中の一般道山岳路線を走るより、高速使って早めに宿に着き、鳴子の湯巡りも良いだろう、と思うが、南の空、八幡平(はちまんたい)の山々の空は明るい。コンビニで缶コーヒーを飲みながらカミさんと相談の上、明るい空に望みを託して国道341号を選び、八幡平の山へと入る。
 雨が止んだ時のほんの一瞬だが、八幡平の燃える紅葉をご覧にいれましょう。








炎のような木々に霧がかかる




ワインレッドのヘルメットとマスタードイエローのレインウェアが紅葉の風景に溶け込んでいる、かな?




やはり惜しい。レイン仕様の格好では。




鮮やか・・・




グリーンが紅葉の色彩を副える




 田沢湖までの約50km、雨の八幡平を走った。1時間少々の間で、雨が止んだのは2箇所。それも各3分ほどだったろうか。その隙に撮ったのが上記写真である。だから、場所を選んで撮ったのではなく、天候で選んだ場所なわけで、ほかにもあったずっと美しい紅葉シーンの数々は、残念ながら肉眼で収めただけだ。ぜひ今度は快晴のもとで走ってみたい。・・・そう思いながら八幡平を抜け出たら、雨、止んでやがる。。。

グローブ、バッグ、レインスーツと防水対策を施す。しかし試作ブーツのみ無防備である。それは防水テストではなく、水に濡らして、乾かして変形しないか、色落ちするのかしないのか、を試す。可哀そうだがそれも試作品の試練。


角館(かくのだて)へ向かう。


列車を見ると瞬時にシャッターを押すクセが。




 武家屋敷が多く保存されている角館の街に着く。ここも紅葉時にはより風情があるのだが、まだ葉は黄緑色。10日ほど早いか。
 すでに昼。街をうろついていると、親子丼、が目に入り、前にデンッと2台を並べて店に入る。“親子丼”という字に魅かれて入ったが、今までのようにラーメンで通すことにしよう。



[ 十兵衛 ]
比内地鶏ラーメン:目立つようにテーブルに置かれていた案内紙には“新発売!お待たせ致しました!”とある。よほど自信があるのだろう。評価は[ ★6個 ]

カミさんが注文した“稲庭うどん・比内地鶏親子丼セット ” ¥1680と値段もボリュームも倍。素直にこっちにすれば良かったなあ。


 今まで4日間を食って、ラーメンの物価というのは東京も東北も変わらないのはなぜだろうか、と考える。土地が安い地方のほうが安いのだろうと思い込んでいたのだ。野菜とかも安いんだけどなあ。でもガソリンは10円少々高いけどね。

 角館の市街を出て数キロ走ると “ドンパン節 発祥の地”というカンバンが目に入った。信号待ちでカミさんが話し掛ける。 「ドンパン節ってアレでしょ、アレ」。
 “ドンドンパンパン ドンパンパン・・・
  うちの父ちゃん はげ頭
  隣の父ちゃん はげ頭
  はげとはげとが 喧嘩した
  どちらもケガねで よかったね ♪”
 これは8番の歌詞である。1〜7番はまったく覚えてないが、これだけは歌える。あのカンバンを見てからというもの、その後30分は、走りながら頭の中で歌っていた。W650の違法改造かもしれないマフラーから奏でる排気音を、タイコのリズム代わりに。
 “ドンドパパ ドンドパパ ドンパンパン はいぃ〜 ♪”



 角館を出発してから鳴子温泉までは写真を一枚も撮っていない。それはず〜っと雨だったから。
 さて、八幡平を南北に貫く国道341号、そして鳴子温泉に向かう国道108号も2005年7月に当サイトで送信した“みちのくの義経と極上の湯巡り”で走っている。同じように雨の中を。だから今回の旅も、3年前のその旅も、その区間の写真はほとんどないのだ。ということで紅葉状況は言葉で説明しよう。
 八幡平は、先に述べたとおり素晴らしい景観だ。そして秋田県と宮城県をまたぐ国道108号、その県境辺りの紅葉はお見事と言えよう。雨の中の夕方に通過しているが、左右前方の山々はオレンジとワインレッドの世界であった。
 また、八幡平の341号とは比べものにならないほど、道路状況は良く、ペースも速い。しかしだ、数台のクルマの流れに合わして走ったら、雨の中を80km/h+αで巡航とは、カミさんにとっては限界速度だったろう。

 やがて今回の旅、最後の宿、鳴子温泉“ゆさや”に着く。近代的なビルの宿も建ち並ぶなかの木造二階建てだ。







これが“うなぎ湯”。

ゆさやの貸切露店風呂。

宿の番頭さんが「雨に濡れないように」と、我らバイクにシートを被せてくれていた。

宿の隣りの共同浴場“滝の湯”。

宿から露天風呂は100mほど丘を登る。

創業370年の宿である。



 まずはこの宿のウリである“うなぎ湯”に浸かり、続けざま隣りの公共浴場“滝の湯”に入る(宿に無料券あり)。“うなぎ湯”はその名のようにヌルッ、ツルッとした湯。そして“滝の湯”はピリッと刺激のある湯である。宿に戻って番頭さんに「いい湯でしたよ」と挨拶がわりに話せば、
 「ええ、初めに酸性 硫黄泉(いおうせん)の“滝の湯”に浸かってカラダを殺菌し、あとにウチの源泉、アルカリ性“うなぎ湯”に入れば、バッチリですよぉ!」
 えっ? 先に入っちまったよ“うなぎ湯”に、と言えば、「ありゃ、それは逆ですねえ、、、」って。
 逆になってもカラダに悪いことはないけれど、それにしても酸性とアルカリ性の温泉が隣同士にあるというのは、全国いろんな温泉地に行ったが、もしかしてここだけなのだろうか、そう有りえることではない。(隣りの滝の湯はやや離れた源泉を引いているが)
 酸性とアルカリ性で中和してしまったカラダだ。こんどは宿の貸切露天風呂に入る。その湯は酸性硫黄泉だ。宿にも酸性・アルカリ性の両泉質の温泉があるのも珍しい。そしてどの湯も加水・加熱・循環なしの“源泉掛け流し”、、、いい湯である。



この旅、最後の晩飯だ。さてその味は、、、。



これら一人分。

すっぽん鍋。。

地ビールは宿泊プランのオマケ。

イワナの塩焼き。


もちろん別注で“呑み比べセット”。

海の幸。



 この宿の夕飯、結論から言ってしまえば、今回の旅の宿のなかで一番良い。それは刺身のなかの“マグロ”で、おっ、と思った。私はマグロ好きである。味には少々うるさい。出てきたのは本マグロとはゆかなくても、メバチマグロの高価な中トロと見た(間違ってたらスマンです)。このクラスのマグロはそう出てくるものではない。しかも海から遠い温泉地で。
 なお、すっぽん鍋は“ステーキプラン”や“しゃぶしゃぶプラン”やら数種のプランからチョイスしたもの。その他の食材もまた良し。
 ではこの宿“いさや”の10段階評価をしよう。(昼飯だけのつもりが、いつのまにか宿も。。。)
晩飯:日本酒呑み比べセットがあったのもここだけ。[ ★8個 ]

温泉:内湯、貸切露天風呂、なおかつ隣りの“滝の湯”を含めた合わせワザは高評価。[ ★9個 ] ※10に達しなかったのは内湯の湯量が、この日は乏しかった為。それでも★9個はめったにない。

[宿泊料金] 入湯税込の同じ宿泊プラン 2名1室一人 ¥12,750より




 鳴子の至福の温泉に浸かって、カミさんのケガもだいぶ良くなった(ような気がする)。カランコロンとゲタを鳴らして待ち歩きもしてみたいが、大事をとってまた今度にしよう。
 明日はついに東京に戻る日がやってきた。さてどんなルートで帰ろうか、、、寝る前に地図を広げる。


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