2008年10月22日






 天気はそこそこで、でっかい宿を出発する。温泉の効力で(この時は)カミさんの具合も良くなったかと思ったが、やはり一人ではバイクにまたがれず、宿に聞いて近くの薬局に寄り、シップ薬を購入。
 あつみ温泉を出ると国道7号を北上。気温19度、爽やかな風、左に海を見ながら快適に走る。この風景は、伊豆や房総半島にも似ているところはあるが、交通量が絶対的に少ない。どんなに快適な環境の道路でも、渋滞ぎみでは気分よろしく走れるわけがない。その点、東北はいいものだ。
 この海岸沿いの国道にはJR東日本の羽越本線(新潟県新津〜秋田間の電化幹線)が並走している。私の場合、線路がチラリ見えると胸騒ぎが起きるのである。なにか列車が通らないかなあ、と。すると左に期待どおりに現れる。しかも同じ進行方向、ラッキーにも貨物列車。(今や貨物列車は希少価値なのだ)




JR貨物所属、EF81交直流電気機関車に引かれる貨物列車だ。こいつなら並走できる。

しかし、鉄道はトンネルでほぼ直線。国道は海沿いで山を迂回。で、頑張って走るも追跡並走不可!

ややハイペース快走。

鶴岡市街地に入る。

片側交互通行も。

市内は高速道でパス。


交互有効は先導車あり。

まん前に鳥海山が。




国道7号から鳥海ブルーラインへ。
 100km/h前後で一直線に走る特急電車だったら追跡する気はないが、貨物列車ならと軽い気持ちで走ったが惨敗。80km/h程度では追いつかないだな、これがぁ。並走シーンはまたの機会があるだろう。
 鶴岡市・酒田市の市内は山形道を走ってパスし、また国道7号に戻って北上を続ける。いちだんと鳥海山に近づいたところで“道の駅 鳥海”に立ち寄り、ここでカミさんはあつみ温泉で買ったシップを貼る。温泉で温めたり、冷やしたり、とこれでいいのだろうか。

 標高2263mの鳥海山。その中腹の1100mまでを、およそ海抜0mから一気に駆け上がるのが鳥海ブルーラインだ。そしてその最高所地点近くまでが山形県、続いて北側が秋田県の県道と仲良く分け合っている。さあて、シップも貼ったことだし、ブルーラインを愉しもうか。









下の遠くに小さく見えるは、巨大な発電風車群。
 結論から話そう。いいですよぉ、鳥海ブルーラインはぁ。ほんとにぃ。
 以前から走りたいと思ってたけど、やはり想像以上に素晴らしい道だ。上った山形県側は、標高を上げるほどに鮮やかな紅葉を拝め、下りの秋田県側は急激に標高を下げるから耳がキ〜ンとくるが、広々とした下界を見下ろしながら豪快に下る。しかもややハイペース(カミさん基準)で全線34.9kmをたった3台しか追い越さないガラ空きさ。平日というのを差し引いても、クルマ少なすぎというのが最高だ。できれば往復したいところだが、少々先を急がねばならないので我慢しよう。
 またまた国道7号に戻り、ちょっとしたどこかの街並みを走っている。信号待ちでタンクバッグの地図を覗けば、にかほ市象潟(きさかた)町。そしてもう昼。ここらでメシでもと思って走り出すと、すぐに何本ものノボリ旗を掲げたラーメン屋が。



みや蔵(みやぞう)
ノボリ旗の“焼干しらーめん”に魅かれて入ったが、店内には数々の創作ラーメンメニューがずらり。さて、、、? (なお2008年11月中旬以降は“道の駅 象潟”隣接の“にかほ物産センター”内に移転)








ここは秋田県、でも“イタリアン塩バジル”、北海道でもないのに“流氷ラーメン”。“もっこりラーメン”てなんだぁ?シモネタかぁ?・・・たいていの場合、そんなウケ狙い的なラーメンの味には期待できないものがある。失敗かぁ?ここ入ったの。。。

「あのぉ〜、“もっこり”ってどんなラーメンですかぁ?」
するとニコニコしながら店主がこう答える。ほのぼのとした東北弁で。
「白髪ネギとキクラゲをまぜて、メンの上にもっこりとのせてますぅ。カラダにいいんですよぉ」
それを聞いて我ら二人とも“もっこり”を注文する。¥700。
やがて先客の“焼干しラーメン”が横を通り過ぎ、その香りの良さに「しまった、“焼干し”にしておけばよかったぁ」と思う。
そしてついつい名前に釣られた“もっこり”のその味は、・・・白髪ネギ旨い。キクラゲとの相性良し。[★6.5個]。※おそらく“焼干し”は★7.5個かな。

店主いわく、油分が多いトンコツ系はこの地域にはあまり受け入れられず、醤油系が好まれるそうだ。
食い終わって席を立つと、足を引きずるカミさん見た店主、私がこんなわけでと話すと「それはたいへん。シップ持ってきましょう」。外まで見送ってもらい、あったかいですなあ、東北の人は。みや蔵のラーメンは店主合算で★8個に格上げしときましょう。








 標高1100mの鳥海山は寒かったが、みや蔵のラーメンで身も心も温まり北上する。走り出してほんの数キロで高速道路らしきカンバンが現れ、国道7号と分岐する交差点が。はてな、2007年のツーリングマップルにはこんな道路は載ってない。日本海東北自動車道とかで、しばらく先まで無料。秋田自動車道に合流し、秋田市内をパスできるようだから、とりあえず走ってみよう。
 だ〜れも走っていない、片側1車線、時おり2車線。対向車も少ない。午前中に走った山形道の時も思ったが、なんでこんな交通量で高速道路を作るんだろうか。しかも今走ってる区間は無料でこれかぁ?。有料になったら誰も走らんぞ、たぶん。なんだかねえ、恩恵受ける人もきっといるのだろうけど、無駄じゃないかって気のほうが多い。国道7号だってスカスカだし、市内を通らないバイパス作ればいいんじゃないのかと。そんなことを思いながら、距離にして100km少々、秋田自動車道の終点まで走ってしまった。
 そしてもうひとつ気づいたことがある。左の写真を見て欲しいが、前にクルマはいないでしょっ。でもねえ、すぐ後ろにはいるんだな。この辺りの高速道は制限70〜80km/hくらいなのだが、それを100km/hで走ってると、すぐクルマに追いつかれる。そのたびに路肩に寄って道を譲るのだが、5〜6台は先に行かしたかな。べつに私らけっしてノンビリ派ではなく、東名・中央・関越・東北道ではしっかり100km/h +α(ときにはウルトラスペシャルxα:除くカミさん)で走るが、どこでネズミ小僧が待ち構えてるかわからない土地ではちょっとねえ。
 ま、それにしてもここらのクルマは一般道、高速道を問わず、頑張って走ってますね。遅いよりマシだから、文句じゃないからね、これは。

 やがて高速を降り、チョットだけ国道7号、そして国道101号の大間越(おおまごえ)街道を走り、“道の駅 みわはま”で小休止。



道の駅 みわはま

リンゴを見て青森県か、と思うも、まだここは秋田県。

やっと一人で降りられる。

“かおり”という梨、1個500〜1000円。その香り、ほんとに旨そう。


ネギ一束150円、安い!

あまりにいいニオイなので購入しよう。おみやげだ。



 「3日後に食うけど、どの梨選べばいいですかぁ?」 道の駅 みわはまの“おらほの館”の店員さんに尋ねる。
 「その630円のがいいでないですかねえ」 若い店員さんが答える。
 「いやぁ、900円のほうがオイシイよぉ」 隣りからバアさま店員さん。
 結局、1個900円の梨“かおり”を買わされた。「オイシイ」って言われりゃそっちのほうを買うわな。差額270円でがっかりするのもやだし。遠方客の心理を分かって言いやがったな、東北のババー、恐るべし。
[梨:かおり] 900円の梨を買ったのは生まれて初めて。で、後日自宅で食った一切れ100円強(8等分)もするその味は、★7個ってとこかな。帰るまでバッグを開けるたびにいい香りを楽しめたから、ちょっとオマケの点数だが。

 道の駅を出て、大間越街道を北へ、JRのローカルな五能線の線路と並走しながら。線路、、、それを見るとまた胸騒ぎが起きる。
 しばらく走っていると、前方に駅が。そして今、発車しようとする列車が見える。あっ、五能線のカンバン列車、“快速 リゾートしらかみ”だ。追跡開始!こんどこそ並走しよう。


駅を発車する“リゾートしらかみ”

ゼファーと並走。


 五能線は非電化であるからして電車は走れない。よって“リゾートしらかみ”はディーゼル列車(気動車)だ。国鉄時代のローカル普通列車キハ48(皆さん知らないかな?)を改造した車両で、ノーマルのDMF-15系エンジンなら最高速度95km/h、220馬力と非力。約50トン(5万kg)で220馬力に対して、カミさんゼファーの重量206kgで68馬力はパワーウエイトレシオ 735対3 、圧倒的ゼファーの有利である。
 なお、今回出合った気動車は“リゾートしらかみ ぶな”というネーミングで、他にも車体カラー・内装が異なる“リゾートしらかみ くまげら”、“リゾートしらかみ 青池”が走る。また、座席指定券は必要だが、快速列車なので特急・急行は不要とリーズナブル。そして一部区間では車内で津軽三味線の生演奏をおこなっている・・・と、JRの宣伝はこのくらいにして、この先の素晴らしい海岸線での並走シーンを写真に収めるため、先を急ごう。





 午前中の羽越本線 貨物列車の二の舞いはご免と、けっこうなペースで我らは走る。これなら先行したかな、と思っていたら、前方の駅でヤツは停車していた。やはり道路と鉄道の走行距離は違うようだ。しかしそのすきに追い越し、先の海岸線でヤツ待つ。








 やって来ました“リゾートしらかみ ぶな”。フルノッチ(エンジン全開)にして我らの横を通過。こちらもスロットルワイドオープンでヤツを追う。
 あれっ、この気動車はこんなに速かったっけ? 並走シーンを撮るから追いついて横に並べと伝えたカミさんは必死で走る。ちょっとこれじゃあシャッター切れないぞとスピードメーターを見れば、その針は100キロをうろうろ。この先、鉄道は直線、こちらはカーブあり、、、で無情にもヤツは先に行ってしまう。そして前方のクルマの一団に追いつき、ジ・エンド。
 ヤツはノーマルのDMF-15エンジンではないな、こりゃあ。間違いなくエンジン載せ換えてるな、たぶん。(帰宅後に調べたら、やはり300馬力エンジンに交換済み)
 なお余談ではあるが、ペアスロープの春のスタイリッシュなウェアに偶然にも同名の品番、DMF-15がある。
(カミさんが着ているアイボリーの革ジャンは兄貴分的なDML-82:これは架空のエンジン形式ナンバーで、他に販売している革ジャン、DML-61や30、DMH-17は、これまた偶然にも鉄道エンジン形式名と一致する。・・・って、パクッたかな?)

春の定番のこのモデル、スタイリッシュなだけではないんです。高機能素材や動きやすいフェルト(羊毛等の圧縮)プロテクションを備えた優れものエンジン、いや、テキスタイルウェアです。もしかして2009年春は、ちょっと改良したレディースモデルもラインナップする、かもしれません。(???)





 リゾートしらかみ追跡をあきらめ、大間越街道をちょいと右に曲がって十二湖に向かう。まだこの辺りの紅葉は、もう少しあとのようだ。
 さて十二湖といっても、実際には大小含めて33個ある。その奥はブナの原生林、そして世界自然遺産に登録されている白神山地が連なる。
 十二湖のなかでも、真っ青な湖水の神秘的な美しさを誇る“青池”をぜひ見てみたかった。しかし駐車場から歩いて5分は、ケガ人のカミさんには不可能で、また、無理したところでもう辺りは薄暗くなっている。最初に出くわした“八景の池”だけ見て、ついでに道路から“日本キャニオン”をチラッと見て宿に向かう。しかしなんですなあ、キャニオンという名から、アメリカのグランドキャニオンをイメージしてたけど、そのスケール、小さすぎ。“日本”も“キャニオン”も言いすぎじゃないかな。

 国道に戻り、もう陽が海に落ちるなか北上。JR五能線舮作(へなし)駅通過。ほんとうはその駅の向こう側の海沿いにある“黄金崎不老ふ死温泉”に泊まりたかったものの、この週は連日満室。日本海を豪快に望む露天風呂は人気が高く、平日とて簡単には泊まれない。で、5キロほど先の温泉宿“深浦観光ホテル”となったのである。“観光ホテル”という名があまり好みではないが。



[深浦観光ホテル]
一泊二食 ¥1万2千円くらい。
夕飯:素朴な海・山の旬の幸。冷めた焼魚は残念だった。[ ★5個 ]

温泉:可もなく不可もない、ややにごりあるナトリウム系強塩泉。前に海を望む露天風呂だが、夜はただ真っ暗やみ。[ ★5個 ]





 宿のねぶた(ねぷた?)を見てあらためて思った。ここは青森県なんだなあ、と。五能線のリゾートしらかみ列車追跡ばかりに気をとられて、秋田県との県境を気づかずに通過していたのである。でもこれまでの大間越街道・五能線の沿線はしっかり目に焼きついている。それほどここは素晴らしい道だ。
 素晴らしいといえば、鳥海ブルーラインも特筆もの。どちらもぜひ皆さんに走ってもらいたいものである。

 さ〜て明日、いよいよこの旅のメインともいえる八甲田、十和田湖に向かう。たのむから雨だけは降らないでくれ。そしてカミさんのねんざ・打撲(?)、そろそろ治ってくれないものかねえ。


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