2013年6月5日

 義理人情もない、あの卑劣な悪党的取締りに腹を立てながら国道45号線を南下。やがて大船渡市に入り、ここにもある復興商店街に寄ろうかと、その入り口を走りながら探すが見当たらず、市街を出てしまう。観光客目当てではなく、地元の為の商店街なのだろうから、目立つ案内表示を出していないのかもしれない。

 大船渡市を通る国道は高台にあるため、回りには家々が立ち並んでいたが(海沿いは壊滅的)、すぐ隣りの陸前高田市に入ると、国道沿いの様子はまったく違っていた。かなり重苦しい雰囲気なのだ。

※陸前高田:たかだ ではなく、りくぜんたかた と読む。ジャパネットたかたと同様な読み方だから、今後は間違えることはなかろう。




一本松、頑張ったんだけどなあ。


陸前高田市内を走行中


 すれちがうのもダンプ、前方にもガレキを積んだダンプ、そんな陸前高田市内を走っている。
 この海岸沿いには、それはそれは美しい風景の松原があった。しかしあの津波で流されてしまった・・・たった一本を残して。
 全国的に有名になったその一本、津波には勝てたが、後の塩害で根を傷め、残念ながら枯れてしまった。その栄誉を称えてということだろうか、現在(6月5日)そのレプリカが完成間近だと知った。
 地図にも載ってない。さてどこにあるのだろう、と迷うことはなかった。陸前高田市内の海岸沿い平地の建物は、ごっそりと津波に流され、遠くまで見渡せる。1キロ以上先にあるのは、、、あれがあの松のレプリカだ。
 松に近づいたが、道路は工事中でそこには向かえない。なので川の対岸から眺めることに。




 6月5日現在、建造中のレプリカ一本松には足場が掛けられているが、昨日の晩、宮古のホテルで見たニュースによると、2日後には外されて完成式をおこなうそうだ。いつかまた訪れ、その姿を見ることにしよう。






これがあの船かぁ・・・。


 陸前高田市を離れて5分ほどで岩手県から宮城県に入る。そして気仙沼市となり、市内に向かう幹線道路を走れば、、、そこにドーンと現われるのが、あの漁船。
 テレビや新聞では見たが、すぐそばにいると、こんなに大きな漁船なのかと実感する。と同時に、海から500メートルもこの巨体を運んだ津波のパワーをも実感。

 すぐ近くのちょっとした高台にJR大船渡線の鹿折唐桑(ししおりからくわ)駅が見える。“鉄”としてはおじゃましなくてはならず、そのホームに向かう。


 ホームには線路があった。あたりまえのようだが、ここ三陸の地域ではそうじゃない場合が多く、ちょっと安心。しかしホッとしたのもつかの間で、ホームから先の線路はグニャリと曲がったままだ。この駅はちょっと高台にあるものの、津波で流された何かが線路を押し曲げたのであろう。そんな錆びた線路を癒すかのように、花が寄り添って咲いている。

 ホームからも漁船を眺める。気仙沼市はこの船を保存するか、または解体するかで協議しているようだ。保存もアリだろう。悲惨な震災を決して忘れず、備えるように。しかし住民にとってはあの不幸を忘れたい、という気持ちもあるだろう。さてどちらが良いのか、私には分からない。(※市は2013年8月5日に解体を決定した)








気仙沼の夜は楽し。


 気仙沼の宿に着いた。宮古の宿探しも手間取ったが、ここ気仙沼も同様、数少ないビジネスホテルは全て満室だった。ならばと、旅館を手当たり次第に電話、といっても2軒目で空室があった。それが「金港館」である。昔ながらの、そう、映画“男はつらいよ”の寅さんが、ひょいっと現われるような、そんな情緒の旅館である。

 釜石からここまで、その旅は重苦しく心苦しい行程だった。このままじゃいけない。なにかパァーっとやらねば、飲まねば、サイフのヒモをゆるませねばいけない。ということで、気仙沼にもある復興商店街、そして復興屋台村に足を向ける。



 まずは復興商店街の“南町紫市場”。ここは生活用品から飲食まで数10軒の店が連なる。

これぞプレハブ!といった商店街。。
気仙沼ホルモンのカンバンの奥には散髪屋が。

 南町紫市場に行った目的は、この地の名物“気仙沼ホルモン”を食うため。しかしお目当ての店は「本日休業」であった。ホルモン系をまったく好まないカミさんはホッとしたようだが、残念でならない。またいつか、と今度は屋台村へと歩く。
 その500メートルほどの距離だが、ガレキ処理はされているものの、震災の爪跡はしっかりと残されている。この気仙沼もまだまだこれから、とうった状況だ。





[フォト:坂上修造]



 あらかじめ市内の地図を持参してきたが、その必要はまるでなかった。気仙沼の港近くの中心街は震災でなにもなくなっており、数百メートル先まで見渡せ、多数の赤チョウチンが輝いているところが“復興屋台村 気仙沼横丁”と分かるから。

[フォト:坂上修造]

 20軒ほどの飲食店がある気仙沼横丁、さてどこに入ろうかと迷う。どの店がどんな旨いものを出すのか、下調べなどしていないのだ。そんな時は店内の雰囲気で決める、のだがどこも愉しそうだ。ま、いいか、とりあえず、と入ったのが元気なオバちゃんがいる“大漁丸”。なんでそんなに元気いっぱいなのか分からないけど、とにかく一人で盛り上がってる威勢のいいオバちゃんである。

気仙沼で水揚げされた魚介類をツマミに生ビール、そしてウーロンハイで頂く。
「気」・・・元気の気だと思ったら、気仙沼の気のようだ。大漁丸のオバちゃんと、オバちゃんのレプリカ、、、?



 1軒だけで宿に帰るような、そんなバチ当りのようなまねをしないのがノンベイたる者、次はマグロでもつまみながら日本酒を、ってえとこで“まぐろ亭”。ここもなんだか妙なところが面白い。

10名程度で満席になるような小さな店内。なぜ壁がオレンジなのだろうか。

講釈によると、この店のマグロは各漁船の遠洋漁業で気仙沼に水揚げされるという。
席についたら、まずは大将の宣伝講釈を聞かなければならない。その後に飲み食いできる。

冷やで頂く地元蔵元の日本酒。これがまた旨いのなんのって、たまらんですな・・・。


 マグロといっても数種ある。クロ(本)、ミナミ、メバチ、キハダ、ビンナガ。私は少々マグロにはうるさいのである。
 とはいっても普段食うのは流通が多いメバチマグロで、クロ(本マグロ)はめったに食わない。なぜならアタリハズレがあるのに、本マグロというだけで高価。対してメバチの上等なのは、クロよりかなり安価なのに、並みのクロより旨いものがある(ちゃんと選べばね)。
 「せっかく来たのだから、大将、上等な本マグロ、出してくんなさい」と注文すれば、「いや~スミマセン、今日はフツーのしかないんですぅ・・・そのかわり、心臓ありますぅ」。ということでフツーのマグロと、マグロの心臓焼きを出してくれ、それをツマミに日本酒をちょびちょび。ほ~ら、ニッポン人でよかったなあ、のひと時。

 その日本酒の蔵元は“男山(おとこやま)本店”という。そういえば、宿のすぐ近くに“伏見 男山”という蔵元があったが、その伏見はまさか京都の?と大将に聞けば、「そうですよ、あの蔵元は昔、京都伏見の酒を勉強したそうで」とのこと。なんだか親近感が湧き、「大将、もう一本、出してくんなさい」。
 そんなこんなで、3軒目はアウト。いい酔い加減で、今日の暗い場面をすっかり忘れて宿にふ~らふらと帰ったのである。






フォト:坂上修造



ホヤ:坂上カメラマンは苦手だが私は大好物なので連日食う。(大漁丸にて)

マグロのカマ:ちょっとアブラっこいのだな。(大漁丸にて)


蔵元 男山本店の蒼天伝(そうてんでん)の特別本醸造。純米・吟醸といった高級感のある酒ではないが、私はこの本醸造ならではの、あっさりした口当たりが好き。

津波の被害にあい、なんとか建っているという姿の“男山”木造三階建て本社屋(登録有形文化財であった)。宿に帰る途中、ほろ酔いでパチリ。



マグロ三点盛り(並):上級のを食いたかったが欠品。(まぐろ亭)

マグロの心臓焼き:特別旨いわけではないが日本酒にグッド。(まぐろ亭)








 ・・・・・なんとかなるでしょう、気仙沼は元気な人が多いからねえ。。。



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