2005年11月28日〜12月3日


 11月28日、ヒョウドウから“シーチングサンプル2号”が出来上がったとの連絡が届く。そのまま送ってもらったところで、細かな変更箇所もあるだろうし、電話では説明が困難。今夜の最終新幹線で浜松に向かい、ビジネス泊で翌朝ヒョウドウ入りすることとした。

東海道新幹線 浜松駅

 夕方までに日常の仕事を済ませ、家に帰って早目の夕食、そしてレモンサワーの一杯、二杯、いや三杯、大急ぎで飲み干す・・・これがいけなかった。。。



 レモンサワーのおかげで、気分良く(よたよたと)家を出る。目的の列車は、東京22:00発、浜松・名古屋行き最終“ひかり433号”である。
 ほどなくして東京駅に着くと、発車までまだ15分ほど時間があり、東海道線のホームに止まっていた寝台電車の写真でも、、、ちょっと失敬して車内の写真も、、、酔っ払っていると時の経つのが異常に早いもので
  ・・・
発車しやがんの!


東京発、四国の高松行きである。


“サンライズ瀬戸”は2階建ての寝台電車。これは2階の車内、静かだ。






高松駅から3分ほど歩くと高松港。屋島の全景が見わたせる。
“屋島”・・・時は1185年、源 義経ひきいる源氏と平家が戦った島。那須与一が平家の扇を弓で射落とした場所である。








 と言う訳で、尾原君はペアスロープのグローブ作りの四国工房として加わることになる。その職人さん達と打ち合わせ後、尾原家の車で瀬戸大橋を渡り、革材料の現場、姫路へと向かう。



革の職人さんとの打ち合わせが終わり、姫路駅で尾原君と別れ、本来の目的地である浜松に新幹線で向かう。





寝台特急電車“サンライズ瀬戸”


22:00同時発車の“ひかり433号”にあっけなく抜かれる。最終の新幹線が行ってしまったのだから、もう浜松にたどり着くことはできない。あきらめて寝ることにしよう。


起きてまもなく、終点高松に着く。さてさてこれからどうしたものか、駅の讃岐うどんでも喰って考えることに。



 高松港で時間をつぶしていると、ぼーっと海を眺めるひとりの男が。ふっとこちらに振り返ると、あらら、JRP(グローブ会社)の尾原君ではないか。
 「偶然だねえ、尾原君!、でも平日のこの時間、いったい何やってんだい?」
 「会社、先月で退社したんですわ。この先、どうしようかと考え込んで・・・」
 「それは困ったもんだねえ。。。」
 「・・・三橋さん!もうこのへんでクサイ芝居やめません? 偶然なんてだれも信じないし、それに私の息子のお土産、その手に持って来てるじゃないですかぁ。さっきから話を聞けば、新幹線と寝台電車を乗り違えるなんてのもありえないし!」
 バレたか。。。「じゃあ突然だけど、尾原君の家に泊めてもらうか。」
 「2日前に聞いてますって、、、!」



ペアスロープの牛革材料を加工している姫路の職人さんに、尾原君を合わせる。 [ 2006年春より、尾原君による新作のグローブを販売予定 ]




やっとたどり着いた浜松。
※少々フィクションを取り入れたノンフィクション旅行記でした。



長〜い、ほんとに長い前置きはこくらいにして、本題に入りましょう。



 11月28日の晩に東京を出て2泊3日の30日夕刻、なんとかヒョウドウの店舗に到着。
 午後4時を回ったところだが、すでにもうクタクタに疲れている。はたしてまともな打ち合わせができるのだろうか、、、。
 しかしここは浜松、仕事の後、兵頭社長自慢の極めつけの“うなぎ”を喰わせる、と前もって聞いていたので、もうひと頑張りしよう。


 さっそく現れた兵頭氏、今日はなんだか目の輝きが違う。前回訪れた時は、なにかこう自信がないというか、前かがみになって、背筋が丸くなっていたものだ。今回はシャキーンと背筋を伸ばして、出来立てのシーチングサンプル2号を前に、手際よく説明をし始める。
 2号は販売品と同じ素材のペアスロープオリジナルナイロンで製作され、試着するとすぐに気づく。完成度が高い。
 ソフトな生地で作った前回の1号サンプルよりもシルエットがキレイで着心地が良く、ハードパッドの違和感も少ない。私のようなプロテクションだいっ嫌い人間を納得させるのに、もうひと工夫といったところまできている。
 思ったとおりだ、ヒョウドウの技術には確かなものがある。これなら大丈夫だ。(けっしてサービス表現ではありません。)
イスの背もたれに目一杯寄りかかって話し始める兵頭氏。「どうだ!」と言わんばかりのデカイ態度は、大きな自信の表れだろう。
ちょうど1ヶ月前は、背を丸くして自信なさそうな兵頭氏(右)と製造部次長(左)であった。そしてその二人を見て意地悪に笑ってる筆者。


シーチングサンプル1号(下)と、デザイン的にもカタチが整ってきた2号(上)。




弊社ナイロン生地にレーシングスーツ用プロテクションパッドを装着する。こんな頑丈なパッドを付けて、限りなく着心地の良いジャケットを作るのは、そう簡単なことではない。

左写真は、、、これは最も同業者さんには見られたくない企業秘密:腕のパターン(型紙)。
左側は原型パターンのペアスロープ DMF-13、右側はそれをヒョウドウノウハウでアレンジしたPSH-001。後者のパターンが絶妙な美しいカーブで描かれているのが分かろう。



PSH-001の基本となったモデルは、
美しいスタイルのDMF-13。
表地ナイロン素材は同一、
デザインも同じような感じになるが、
似て非なるもの、まったくの別モノである。
DMF-13


 HYODのシーチングサンプル1号、2号。筆者の無理難題を聞き入れていただき、よくぞここまでやってくれた。マラソンでいえば10キロ通過地点で、ゴールまではまだ先が長いが順調なスタートと言えよう。もし2号サンプルが問題外のものであったなら、このサイトもここで終わっていたかもしれない(春の発売に間に合わない=途中棄権)。兵頭氏、そして氏のスタッフに盛大なる感謝を述べよう。


 さてここから先の作業は、HYODからペアスロープへとバトンタッチされる。 あっ、マラソンというより駅伝のほうがふさわしいか。

 夕方5時から、缶コーヒーひとつでいつの間にか3時間も打ち合わせていた。
 「兵頭さん、腹へって死にそう! 帰る前に約束のうなぎ、究極のうなぎ!」
 「もう遅いですよぉ、その店8時で閉まっちゃいました!」
・・・なっ、なんということだ。2泊3日かけて浜松に来て、自慢げに語っていたウナギを喰わせずに帰れとは、、、先ほどの「感謝」は削除だ。








どうしてもウナギが頭から離れなかった。最終の東京行き新幹線で、「これドジョウか?」と思えるほど小さい、冷めたうなぎ弁当を喰らう。


さあ次はいよいよ“ペアスロープ プロトタイプサンプル”の製作編。
これもリアルタイムでお届けします。
なんだか、ほんとうに販売できそうな気がしてきました。
第四話、12月下旬にご案内。

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