第3話 2007年10月23日

 米沢の街に到着。まだ昼を少し回ったところだから、上杉謙信まつわる史跡でも、サラッと訪ねてみようか。
 そういえば2006年のゴールデンウイークにも、ここ米沢に来ている。あの時は米沢紬(つむぎ)を見るのが目的で、謙信のことにはほとんど触れていない。時間があったら夫婦坂旅紀行 2006年5月“米沢”(動画付)、あとでご覧を。米沢からの行程が今回とバッティングしているが、季節もメンバーも、そして走行中の速度も違うので、趣きも当然異なる。
 まずは歴代上杉家が眠る御廟所(ごびょうしょ)、墓所に興味はないが、昨年の米沢紀行では、中に入らなかったので。





拝観料を払って奥に進むと、初代 上杉謙信から、12代までの藩主が埋葬されている。謙信のそれは左右に分かれた各藩主の中央に構える。

境内の400年を越す老杉の中をひき帰す。静粛な空間、神聖な場所だ。



 次は米沢城跡の上杉神社に向かう。しかしちょっと前を通るだけで、ホテルにバイクを置いてからぶらつくことにする。荷物を付けっ放しでそこらに停めて置くのも心配だから。


謙信公の軍旗、“龍”と“毘”がたなびく米沢城跡の前で。

夕飯後のデザート、よもぎ大福も調達。小林餅庵、小さなガラスケースにこの日は大福2種と餅3種のみ。よほど味に自信があるのだろう。今日は13夜かぁ。

今晩の夕飯、米沢牛の料理屋の場所もあらかじめ知っておく。

米沢城跡にいちばん近いビジネス“ホテル ベネックス米沢”を事前予約。ロビー横にバイクを置く。


 米沢周辺には東西南北30分も走ればいくつもの温泉地がある。しかしビジネスホテルを選んだのは、市内で極上の米沢牛を食う目的のため以外にはなんの理由もない。
 ホテルにバイクを置いて米沢城跡、その中の上杉神社に歩いて向かう。そのあとが米沢牛。

 さて、私の格好だが、とくにアウターの着替えなど持って着てないから、走って来たライディングスタイルとほぼ同じで、ヘルメットとグローブが有るか無いかの違いしかない。カミさんの格好も同じことが言える。我らがバイクで来ている、そのスタイルであることを見破れる一般の人は、まずいないだろう。バイク乗りであるなら、革パン、デニムのスソからチラリと見えるブーツのチェンジパットで気づくくらいか。
 まあ、そんな格好のことなどで優越感を覚えることなどないが、バイクと街着の両刀使いができるのは便利このうえない。
 ちょっと自慢げに上杉神社に歩き出す。
米沢の和牛を食いにきたのだから、敬意を表してこちらも和牛の革ジャン。試作品のショルダーバッグに、下はヒョウドウ社の防寒デニム。そしてブーツは極秘の某社製・・・これはもう公表済みでしたね。


[ショルダーバッグ BN-1]
帆布と牛革製の丈夫なショルダー。2007年11月発売だが試作品の段階から使っている。ウエストベルト付なのでライディング時でも風でふらついたりしない。なお、他のシリーズ同様、帆布生地にコーティング加工を施し、簡易防水仕様となっている。
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米沢城跡の上杉神社に向かう。年間180万人訪れると言われる観光地だが、だ〜れもいない。平日の夕方はこんなものだろうか。



上杉神社は、上杉謙信ただひとりを祭るために作られた。
謙信は越後の春日山城(前回の二輪旅紀行)で亡くなっており、その義理の息子 2代目の上杉景勝とともに、会津、米沢と遺骨が移された。
その後の米沢藩主の上杉家は江戸時代が終わるまで14代つづく。


上杉家が米沢の藩主になる前、伊達政宗はこの地で生まれている。





 歴代の米沢藩主のなかでも、いや、歴史上のあらゆる人物のなかでも9代目“上杉鷹山”は私がもっとも尊敬できる人と言える。
 「なせば成る・・・には感銘する。鷹山の言葉として有名だが、元はといえば武田信玄の名言「なせば成る、なさねば成らぬ。成る業を成らぬと捨つる人のはかなさ」からを引用。初代先祖 上杉謙信の宿敵の武田信玄ではあるが、鷹山はきっとどこかを尊敬していたのであろう。
 「してみせて 言って聞かせて させてみる」、これも指導する立場の人に言った鷹山の名言。それから150年ほどあと、その鷹山に影響を受けた人物がいる。「やってみせ 言って聞かせて させて見せ ほめてやらねば 人は動かじ」、太平洋戦争中の山本五十六の語録である。五十六は武田信玄の家臣、山本勘助の弟の子孫。今度は、その敵である上杉謙信の子孫、鷹山を尊敬していたとも思える。
 いい言葉には時代、そして敵、味方はないようだ。



 午後5時を過ぎれば、まわりが山々の囲まれた米沢はすでに暗くなっている。そろそろ米沢牛でも食いに行こうか。


おっと、なんだか“料亭”といった感じ。こういったメシ屋には慣れてないので、恐る恐る入る。高そ〜だなあ。


 “吉亭”は米沢でもっとも有名と言える、極上の米沢牛を頂ける食事処だ。風格ある大正時代の建物、江戸時代からの庭園、上杉家の家老屋敷だったそうだ。 ・・・よって安かろうはずがない。「ツーリングで、そんなゼイタクしやがって!」と、すでに思われているだろうから、その予算計画を話そう。

 前にも米沢周辺には温泉地が数多くあると書いた。昨年、そして数年前も泊まっている。その宿泊代は、およそ1万5千円、二人だと3万円くらい。ならば同じ予算で旅館よりずっと極上の米沢牛を食おうじゃないか、って考えたわけである。
 ビジネスホテルのツイン(朝食付)は二人で1万円ほど。“吉亭”で極上を食って呑んで2万円予算。二人合計3万円!、同じじゃないか! しかも凄い贅沢な気分になれるじゃないか!
 では、今、腹が減ってる人には申し訳ないが、余計なお世話かもしれないが、その米沢の和牛をお見せしましょうか、味の解説付で。






テーブル席もあるが和室(個室)を選択。和室からは見事な庭園が見られる静かで贅沢な空間だ。

税込5775円で特選霜降りロース3枚(野菜・きしめん・餅付)。広げれば小さなハンカチくらいの大きさだが、一枚、一口いくらなのかを計算してしまう貧乏性の我ら。 して、その味は、、、10段階評価するなど馬鹿馬鹿しいほど美味い。


一切れ食ってしまってから写した、私が別注した120g税込み6300円の単品ヒレステーキ、焼き方レア。カミさんはステーキ好きではなく、ましてや半ナマのレアなど問題外だが、「美味しッ」と言いながら3切れも食われた。なお、写真がブレているのは、最初のひと切れを口に入れながら、「旨め〜!」って言いながらシャッターを切ったから。


なお、ビールはもちろん、“鷹山(ようざん)”(上杉鷹山の鷹山)という、それはそれは旨い純米吟醸酒も呑んでしまい、少々予算オーバー。 とは言っても勘定は2万円、プラス数百円だが。


お品書き
しゃぶしゃぶは2人前で注文だから、すでに11500円也。白いあぶら身はあるが、嫌味がない。 ステーキは、ヒレとサーロインが有り。120gなど一瞬で食い終わるのだ。 ここのすき焼も、さぞ旨かろう。いつかぜひ食ってみたい。その前にちゃんと働いて。

夜の部は予約して食うのが基本だが、平日の昼の部は予約なしでも、しかも2千円台、3千円台とリーズナブル(この吉亭なら)な料金で食えるようだ。
ヘルメット持って、ダッサイ格好で入るような料理屋ではないが、どっかのウエアメーカーのライディングスタイルなら、まったく違和感はないだろう。





 う〜ん、かなり旨い。うわさに偽りはない。ずいぶんと贅沢した気分だ。でも温泉旅館と同じ予算。
 昨年の米沢訪問では、近くの小野川温泉の旅館で、米沢牛ステーキ・スキヤキコースなる宿泊をした。その和牛の味にたいして感激はなかった。温泉は良いが、米沢牛ってこんなもんかぁ?と思った。 ・・・まあ、旅館のコースのステーキと“吉亭”とを比較するほうが間違っている。いくら有名な米沢牛だって下から上まで等級がある。そう、革ジャンの革素材だってランクはあるのだ。某、大田区夫婦坂にある革ジャン屋の革素材は“特Aランク”!、あまり知られてないんだけどね、、、残念ながら。

 ビジネスホテルに戻って缶ビール買って、昼間に買ったよもぎ大福をツマミに。なんだか相性は良くないが、大福自体の味は評価“7”の合格点。でも米どころのご当地、柿の種なんかを買っておけばよかったか。
 テレビでは天気予報。アナウンサーが明日の天気は今日よりも快晴だと言っている。今日だって雲ひとつない快晴だったから、明日はどんな快晴なのか。期待して寝るとしよう。



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