2006年10月14日 送信


 浜松のヒョウドウプロダクツ社は、レーシングスーツを得意とし、ハイレベルなプロテクションノウハウを持つメーカーである。
 一方、弊社ペアスロープは、ツーリングモデルを主体とした比較的大人しい製品を作り続けている。両社、製品に対する考え方に距離があるメーカーなのだ。
 そんな中で2006年の春から、技術協力をおこなったコラボレーションモデルを作った。ナイロン製品の。
 ・・・しかしよ〜く考えてみると、製品作りに考えの違いはあるにせよ、俺たちは日本で数少ない工房を持つ、“革製品”を最も得意とする職人メーカーではないか。ナイロン製ウエアもほどほどにして、本職の“革”で、今までにない“男の勝負服”を作ろうじゃないか。 
 と、2006年9月、浜松に向かったのである。


気合いを入れて向かってゆく筆者、待ち構える代表の兵頭氏



 しかし今回の企画は、協力部分はあっても、おそらくコラボでひとつのウエアを作るのではないだろう。どちらがカッコ良く、機能的なウエアを作れるかの勝負。しょせん同業社の競合メーカーなのだから、いつも“仲良し”なんてチャンチャラおかしくてやってられない。ましてや代表の兵頭氏は「平家」の家臣の末えいと聞いてはなおさらのこと。(平家物語にも“兵頭”という名が出てくる)
 私は「源氏」の家来の末えいである。ご先祖様の名においても、決して負けるわけにはゆかないのだ。歴史的な結果は源氏の勝利となるが、さてどうなるかことか。


[それにしても、私の行く先々で平家関係者に出会うのはなぜだろう。宿命か運命か。 普通、源氏方だの平家方だのと800年以上前の先祖のことなんか、分からない人がほとんどなのだが。。。]

笑顔でいられるのも、この瞬間までか。

 初回の企画会議には、ヒョウドウ社の兵頭社長を始めとして、営業、製作責任者の面々、そして我がほうは私と、なぜか松下。弊社HPで“夫婦坂革ジャン改革”なる生意気なページを担当し、レースもツーリングも大好きヤロー。何か役に立つのではなかろうかと連れて来た。
 で、今回の企画は、
“サーキットも走れるツーリングウエア”
 「別名:ひつじの皮をかぶった狼服」

 近頃、サーキット走行会が盛んに行われている。筆者もたまに参加するが、それはそれは楽しい。
 サーキットを極力安全に走るなら、HYOD社お得意のレーシングスーツがある。しかしツーリングにはちょっと(かなり)使い辛い。ならば、ツーリング主体の大人しいスタイルで、サーキット走行可能なレザースーツを作ってしまえば良いではないか。できればMFJ公認の。
 ・・・言葉では簡単だが、それがどれだけ難しいことか、私自身、もの凄く理解している。正直、弊社ペアスロープだけの技術では作れない。だからその難問をHYOD社に投げかけたのである。

 なお、もうお分かりのとおり、今企画はナイロン等の化学繊維品ではなく、“革”。ナイロンなどサーキットで転けたらひとたまりもなく、強度など“革”には遠く及ばない。MFJ公認は問題外なのだ。
先ほどまで笑っていたHYOD営業部長だが、企画の趣旨を聞いたあとは、頭をかかえるのみ。

MFJ公認:レースはもちろんのこと、サーキット走行会でも公認のレザースーツを奨励している。公認を得るには、強度や作りなど、きびしい検査を通過せねばならない。


PAIR SLOPE
革ジャン・革パン
 ペアスロープは、ツーリングのための、バイクを降りても動きやすい、比較的大人しいデザインのレザーアイテムが得意。しかしこれでは制限付きのつまらないサーキット走行会しか参加できない。
 そしてHYOD社は、レーシングスーツからフィードバックされた、“STXシリーズ”なるレーシーなツーリングギアを持つが、これでもその作りからMFJ公認とはならない。
 いっそのこと、HYODのレーシングスーツを上下切り離せるツーピースにすれば、ツーリングにも便利になり、MFJ公認も得られよう。
 しかし、そんな安易なことなら猿でも考えるだろうし、しょせん、ワンピースがツーピースとなるだけでレーシングアイテムには変わりない。まあなんと言いましょうか、極端に言えば、“電車にも乗れるレーシングスーツ” が目標なのである。(弊社革ジャン・革パンは新幹線も飛行機も乗っている)
HYOD
STXシリーズ


HYOD店内のSTXシリーズに筆者の革ジャン・ハンチングを置かせてもらった。それにしてもなんという違和感であろうか。メーカーコンセプトの違いがはっきりと分かる。

STXシリーズを上下つなげて試着する松下。ツーリングには便利なものの、その着心地は、やはりレーシングスーツに近い。 次はHYODご自慢のレーシングスーツを試着。松下にとって着慣れてるレーシングは、こちらのほうが動きやすいと言う。(ライディング時)

筆者がめざとく見つけたのは、ニュー防寒デニム。弊社ペアスロープでは昨年2005年12月に例外的臨時販売をしたが、今年は11月から、また例外的に販売しよう。これ、なかなかの優れモノなので。(詳しくはメニューの“製品裏情報”サイトで10月末発信)


 さて、HYODスタッフには企画の趣旨をたっぷり説明した。まだデザイン画も製作仕様書もなにもできていない。頭の中でぼんやりと浮かんでは消えて、といった感じだ。
 はたして想像通りのウエアができるのだろうか。兵頭氏も各責任者も頭をかかえるばかりである。
 ・・・今日のところは悩んでいてもしょうがない。そうだ、ここは浜松、こんな時は“うなぎ”を喰って元気をもらおう、酒をたくさん呑もう、ドンチャン騒ぎだ!


うなぎを喰ってニコニコの逆ハンチング松下、
わざわざサムエに着替えて喰う筆者、
そして金髪の兵頭氏。
よくよく見ると、妙な3人である。



[第一話まとめ] 2006年10月13日現在、HYOD社とは電話で、あ〜だこ〜だと話をしてるだけで、いまだデザイン画すら描けない状態。ほんとに難しいウエアなんですよっ、今回の企画は。
正直なところ完成の確率は五分五分です。初めの基本パターン(型紙)が作れるかどうか。それは弊社ではなくHYOD社の技術にかかってます。
“ひつじの皮をかぶった狼”ウエア。もしできなかったらゴメンナサイ。あらかじめお詫びしておきましょう。あっ、こんなHPまで発信してそれじゃあ済まないでしょうねえ。・・・そのときは私、坊主頭にします!(でもスポーツ刈りで勘弁を)
なお、この企画は“ビッグマシン”誌で11月号(10月14日発売)から連載。HYOD社のHPだけでなく、編集さんからも、また違った視点で公開されます。
ということで、もう逃げられませんねえ。。。(でもヤラセでない証明に、たまには“失敗”ってのもアリかとも思える。ビッグマシン誌には迷惑でしょうが。)
兵頭さん、スタッフの皆様、どうか頑張ってくれ、いや、ください。 [三橋]
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