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 東京を出る前日の気象庁週間天気予報では、秋田県地方は4日連続で晴れマーク、それゆえこの旅を翌日決行した。にもかかわらず、今朝鳴子を出てからほとんど雨天走行を強いられる。おかげでおいしいワインディングをいくつも損したではないか。そして松川温泉に着くと、雨が止んでやがる。。。
 天気予報にいつまでも文句を言っても仕方がないので、ここ「松楓荘」に着くなりさっそく風呂に入るとする。
 松楓荘は開湯“寛保三年”と玄関に記されているように古い歴史を持つ湯治宿だ。と、言われても“寛保(かんぽう)”の元号なんてどれだけ昔なのか分かんないのは私も同様。だから家に帰ってから調べました、1743年! 今から260年以上も前だという。日本には開湯1,000年を越える温泉はいくつもあり、前日の東鳴子温泉は700年代半ばという説があるから、松川温泉の開湯よりなお1,000年も古い。しかし交通の便が悪い江戸時代に、標高800mほどの山奥にまで人々が湯治にきていたのだから驚きである。
 しかし、もっと感激したのは歴史どころではなく、乳白色の湯だ。どこぞの温泉が乳白温泉剤を入れたバカバカしい事件もあったが、ここは正真正銘のチチの白色。
 





宿の横に流れる透き通ったライトブルーの松川。通常、湯量の豊富な温泉地に流れる川にほとんど魚はいないが、ここには岩魚がいるという。



もんのすごく気持ちがいい、乳白色の内風呂。同じ源泉の露天風呂は松川のせせらぎを聞きながらの至福の、、、混浴。だ〜れもいないのは、だ〜れもいない時に撮っているから。(当たり前) いやいや、平日の特権です。




松楓荘名物の“岩風呂”。 宿の母屋から、たよりない木橋を渡ると洞穴の中にそれはある。母屋の乳白色の源泉とは異なり、こちらは透明感のあるライトブルーで混浴!(女性タイムあり)。なお、日によって湯の色は変化する。



1. 以前は岩風呂の上にそれはそれは立派な大木があったそうな。
2. まさしく湯治宿といった素朴な6畳の部屋。
3. すき焼き風鍋といい、岩魚の塩焼きといい、食事も満足。
4. 夕食後は、宿のご主人自ら入れるコーヒーのサービス。


 「30年ほどこの宿やってるけどぉ、庭でクマを見たのは初めてだぁ、最近なんか変だなぁ」
 まったりとした東北弁でコーヒーを入れながら話すご主人。
 「わたしがこの宿の7代目なんですよ、地熱発電所ができて道がよくなったけどぉ、それまでは、そりゃぁ大変な道でねぇ」
 日本最初の地熱発電は、1966年にこの松川で開始した。そう、天然の蒸気で発電ができるほど、ここの温泉のパワーはもの凄いのである。
 「あっ、お客さんカメラ持ってるけど、内風呂に持ってくと壊れますよぉ、温泉には硫化水素ってのが少し混ざってて、それが悪いことすんだぁ。宿のテレビなんか何度も壊れてる。・・・え〜っ、もう撮っちゃったの〜」
 先に忠告してほしかったぜ、ご主人さん!(忠告されても、たぶん撮ったであろう)。 そういえば部屋のテレビ、、、15分に一度は突然画像が消えたもんなあ。スイッチ消しても、風呂から帰ると勝手に点いてたし。初めはお化けでもいるのかと思ったが、温泉のシワザだったんだ。ナゾが解けて一安心といおうか、カメラが不安といおうか、、、微妙。
 
翌朝は宿の主人が見送り。 あんなにいい温泉浸かって、美味い食事で、あたたまる主人のコーヒー頂いて9,000円ほど! ぜひまた来たい宿です。

※なお、硫化水素はたいがいの温泉に含まれており、人間にも毒だが、その量は極めて微量なため悪影響はない。


さて、蒸気を勢いよく上げる地熱発電所を横目に、樹海ラインを八幡平山頂めざして藤七温泉に向かう。
・・・なんだ標識どおりじゃねえか。。。


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