2004年4月:文・写真:三橋 [ 全5ページ ]


 バイクに乗り始めてはや30年、幾度となく信州には足を運んだが、今まで一度も“桜”を目的としたツーリングには行っていない。東京の桜が散ってしまった4月上旬、なんだか無性に信州の桜が見たくなったのだ。
 信州伊那、高遠の桜は凄いよ、って人づてに聞く。写真でも目にするが、やはり実際に自分の目で見て確かめないことには、どれだけ凄いのか実感が湧かない。高遠の桜満開の日に狙いを定めて、いざ信州桜めぐりに出発。
 

 最近、夫婦でのツーリングが多い。その理由はカミさんが大型自動二輪の免許を取得したことにほかならないが、今回の桜ツーリングのように、仕事よりも桜の満開優先で、しかも平日の1泊ツーリングとなれば、そう簡単に同行する仲間はいない。「明日、信州に行くぞ」ってついて来るのはカミさんくらいだからだ。

 今回のバイクはBMW F650とスズキ ジェベル250。オフ車もどきとオフ車の組み合わせだが、モンゴルツーリングのツアーに行きたいためのダート練習も兼ねている。そのモンゴルは私が行きたいと言ったわけではなく、アウトライダー誌(Vol. 4)に影響されたカミさんの希望。そのナラシ運転といったところか。(でも、いつ行けるかは未定)
 4月12日、中央高速を信州目指して走る。当然ながら、高速走行の苦手なオフ車ジェベルに私が乗る。流れの速い(120km/h以上)追い越し車線は走れないし、尻は痛くなってくるし、で苦痛だけれど、カミさんがジェベルに乗ったらドン臭いので仕方がない。
 高回転のエンジン音を聞きながら、満開の桜を思い浮かべて口ずさむ。“ぼく〜が そぉ〜ばにいるぅ〜よ♪” 河口恭吾の「桜」だ。昨年のこの時期は森山直太朗の「さくら」だったし、一昨年は福山雅治の「桜坂」だった。しかし、童謡の「さくら」は口ずさんだことはない。“さぁ〜くぅ〜らぁ〜、さぁ〜くぅ〜らぁ〜♪”って、暗すぎだね。そのあとの日本語もよく分かんないし。あれじゃぁ、ブレーキングが遅れてガードレールに突っ込んじゃう。
 諏訪南インターで中央高速を降り、ほんの10分ほどで金沢林道の入口に着く。私の場合は、年に1〜2度ほどダートを走るが、カミさんは20年ぶり。「大丈夫かなぁ?」なんて言うが、そんなんでよくダート王国のモンゴルに行きたがるものだ。


ヒジ・ヒザにプロテクションガードを着け(ほんとは身体に装着するもの)、東京から乗ってきたF650に跨ろうとするが、ちょっと待ったぁ! 20年ぶりのダートで、重いF650を操れるわけがなく、ジェベルに乗り換えさせる。

 金沢林道の入口でダート装備の準備をしていると、年配夫婦の普通の乗用車が先に林道へと入っていった。「な〜んだ、乗用車も入っていけるダートなのか」と、ガックリする私。ホッとするカミさん。
 さて、林道を走り始める。なんとF650の重いことか。中古を格安で買ったとはいえ、転けたくないのはやまやまだが、その価格と同等のカメラ機材を積んでいるので慎重に走る。さぞかし後ろのジェベルは軽やかに着いて来てるのだろうなあ、とミラーを覗くがジェベルははるか後方。なんてこった。

金沢林道中腹の八ヶ岳大パノラマ

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