さてさて、ここ「四季の宿 じんざ」のウリはクジラづくしと聞いてわざわざ東京からはるばるやって来たのだから(近いけどね)、期待のほどは大きい。しかもここは大変ありがたいことに酒の持ち込みOKときている。大事に持ってきた純米大吟醸「久保田 万寿」の出番も近いことだろう。
 ひとっ風呂(夏みかん?みたいなのが浴槽にゴロゴロと)浴びて、体がほのかにみかんの香りをただよわせつつ部屋に戻ると、クジラがテーブルに満載!








 喰らいながらクジラ解説タイムとしよう。
 その前に「久保田 万寿」で乾杯。いくら一升瓶でも10人(未成年含む)いれば、ビールのグラスに一人一杯と少々、おかわりは早い物勝ち。案の定、我先にゴクゴクと飲み干し、おかわりを求めて「久保田」に群がる。そして3分とかからずカラ。。。
 最低な連中である(私を含めて)。いくら普段呑める酒ではないといっても、純米大吟醸ですぞ、もっと味わってのど越しを楽しまなきゃぁ・・・ビールのように飲みやがって。
「おかみさ〜ん! 地酒の一升瓶持ってきてちょうら〜い、2本ね〜」。


ミンククジラのユッケ風 ミンククジラのにぎり寿司
中央にニタリクジラの刺身
左はなぜかびんちょうマグロ

ご覧ください、この色、ツヤ。
ミンククジラの刺身





ツチクジラ南蛮漬け風 ツチクジラ竜田揚げ
これを喰い始めると、誰それと給食の話題に入る懐かしい味。ただし30代なかば以上だけどね。


 クジラには大きくわけて2種類。オキアミ等を飲み込むヒゲクジラ類、そして魚・イカなどを獲物とし歯を持つハクジラ類だ。ここ「じんざ」にでるのは、前者のミンククジラ・ニタリクジラと後者のツチクジラである。そしてどちらもおおよそ10メートル前後。30メートルにもなるシロナガスクジラには遠く及ばず、イルカを大きくした感じか。ところでイルカとクジラの違いって知ってましたぁ?

 ・・・答えは同じクジラ類、でも全長4メートル以下をイルカ、それ以上をクジラって呼ぶのだそうだ。だからシャチ(オルカ)はクジラ。けっこう単純なんだぁ。でも、こんなこと40数年生きてきて、今まで知らなんだ、、、なっさけねぇ〜。


手前の黒っぽいのが
ツチクジラのタレ
タレと言っても液体ではない、干し物である。

ツチクジラの大和煮

ミンククジラの
カラシ味噌和え
左から、皮の味噌漬け、
ベーコン、腸。
全てニタリクジラ


 クジラベーコンに箸を向けながら、ふっと思う。
 房総半島の和田町は日本に現在5つある調査捕鯨基地のひとつ(他に、網走・函館・宮城県 鮎川・和歌山県 太地)。千葉県内房(東京湾)での歴史は古く1600年代からツチクジラの漁が始まったといわれる。20年以上前には全国に数十の捕鯨基地があったそうだが、日本がIWC(国際捕鯨委員会)に加盟して以来、年を追うごとに捕鯨規制によってその姿を消し、現在は商業捕鯨の完全撤退、調査捕鯨のみである。

 そこで疑問が生じる。なんで研究をうたい文句の調査捕鯨なのに、民宿で我々の口にクジラが入るのか? 商業捕鯨ではないのに、なぜデパ地下やスーパーでクジラが売っているのか?・・・なんでだ、なんでだろ〜う♪(by テツ&トモ)
 それは、捕獲数さえ守れば、調査捕鯨といっても基地に持ち帰って解体、その副産物ということで販売可能。同じ捕鯨国ノルウェーもIWCに加盟しているが、反捕鯨に対する異議を申し立てており(事実上IWCに従っていない)、自国近海内で商業捕鯨を行っている。日本もIWCに従わず、勝手にクジラを獲っちまうと、それはそれでアメリカなどから、しっかりと制裁処置が待っている。。。ちょっと話が堅いので、分かりやすく説明しよう。

・・・とある小学校、IWC組の学級会議 議題:「クジラについて」
 アメリカ君とイギリス君が真っ先に発言する、
「クジラは少なくなったし、可哀想なんだから、もう捕るのを禁止しようじゃないか!」
すると、メガネをかけた小さな日本君がボソボソっと、
僕たちは400年も前からの歴史と伝統があるんだ、どうかそれだけは、、、」。
すかさず体の大きいちょっと乱暴者のアメリカ君、
「おまえの家は他に食い物がたくさんあるじゃねぇか!ハンバーガーだって教えたんだから、とにかく禁止だ!」 
でも、そのアメリカ君、アラスカにいる親戚のイヌイット君(先住民)だけは例外にしろと議長に言っている。理不尽だと思う日本君、以前、油の為にさんざクジラを取りまくって減らし、今はクジラが可哀想とぬかす。じゃあ牛やニワトリはそうでないのか、、、ざけんじゃねえ!って声を大にして言いたいが言えない。
 同じ思いで隣に座っていたノルウェー君、
「俺ん家は漁師だ。自分の庭でクジラを捕るのがなにが悪い!」
っと席を立つなり家に帰っちゃった。日本君もいっしょに教室を出てしまおうかと思ったが、後で仕返しされるに決まっている。そこで考えた日本君、
「まだまだクジラの研究をしなくてはなりません。絶滅しないよう少しだけ調査にクジラを捕らしてください。でも検査したら死んじゃうし、それを海に捨てたら汚れるから、家に持って帰ってちゃんと処分します。」・・・

 とまあ、私の勝手な解釈なので、全てを信用してもらうのは困るが、やはり個人的には
”クジラが可哀想なのは判るけど、牛はどうなのよ?”って思いもなくはない。 
 ・・・もうやめにしておこう。牛で革ジャン作っている私なんかがとても言えた義理ではないのだから、、、。

シャキッとした歯ごたえのあと、ノドを通り過ぎる。美味いッ! たった1枚のベーコンが胃袋に入るまでにこれだけ考えさせられるとは、クジラってすごいね。






最後の〆、これで満腹。
ツチクジラとウドン


 さて、クジラをたらふく食べたし、酒もしこたま呑んだので、そろそろ寝るとしようか。おやすみ! って、まだ7時過ぎじゃねえか。



ゴロンとなるデブ、座って寝るオジサン、仕事しだす人、、、。

ちなみに「四季の宿 じんざ」のお勘定、
クジラづくしの1泊2食+ビール8本+地酒日本酒3.6リッターで
ひとり平均約 ¥10,600(税込み)でした。


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