文:三橋 [2009年2月17日送信]


 2008年5月上旬、いよいよ試作品をぶら下げて彼らが弊社にやって来た。初回の試作品を初めて見るというのは、期待と不安が入り混じった気分である。


 お客さんのいない平日、小さな弊社店舗の作業台の上に、それらは並べられた・・・・・・なっ、なんなんだ、これ! カジュアル系でいこう、とは言ったけど、ちょっとカジュアル過ぎないか、これ!

花田氏デザインのR-05。

R-05を前にして自慢げの花田氏。
 試作ブーツは、先に発売しているR-01/02ブーツと同じ新潟工場製である。その出来立てホヤホヤのブーツは花田氏担当のR-05のみ、私のデザインしたR-06はない。
「なんで俺のR-06はないんだぁ?」
「まずは私のR-05をタタキ台にして、そしてより完成度の高いR-06の試作に移行しようと、、、」
 いや、きっと自分のから先に作りたかったにちがいない。もし私が花田氏の立場でもそうするだろう。俺のが先だ、あんたのは後回し、てな具合に。
 それにしても、アイボリーホワイトの色だけでも派手なのに、ギンギラのシルバー革を内装にしたのには驚いた。氏いわく、「カッコいいじゃないですかぁ、きっと若い人にもウケますよぉ」は、分からんこともないが、現在の大型バイクユーザーの平均年齢は30代後半、あと2〜3年で40代に達しようとしている昨今、若者は少ないんだけどなあ。。。


真剣な表情で仕様説明する花田・藤井の両氏。

 R-05にはふたつの試作品がある。どちらもアッパー(上部本体革部分)は同じ仕様だがソールは異なる。アイボリーはクレープソール(ゴム系)で、ブラウンはウレタン系のソール。しかしウレタン系のほうは、なんでこんなにソールがぶ厚いんだ?
 花田・藤井の両氏とも、バイクには乗っていた。だがそれは10年以上も前のことで、操作感というものはきっと忘れてしまったことだろう。しかしそのへんを補うのが私の出番なのだ。



すご〜く撮り辛いんです。こんな写真。
 早々にR-05初回試作を試し乗りしてみる。その際、乗りやすいバイクではそれなりの答えしかでないから、ここで一発、私のバイクの中で、もっとも乗りにくいカワサキ12R(2000年初期型)をひっぱり出す。花田氏デザインのR-05にはちょっと残酷か。
 東京大田区の弊社を出た瞬間に「ものすごくチェンジしにくいじゃないか!」が第一印象。そして第三京浜国道(高速道路のようでそうではないが高速で走る道)に向かう。300km/h出るバイクで100km/h走行は辛いが(80キロ制限だったかな?)、おとなしく走ってステップとの相性を探ってみる。たまにはドッカーンとスロットルワイドオープンしてのブレーキング。いろいろと探ってはみたものの、残念ながら操作性は全て落第点であった。まあ、初回試作が満点なんてこと、ブーツだろうがウェアだろうが、いままでに一度もないから落ち込んだりはしない。それに、私のデザインじゃあないのよ、このR-05はね。

 せっかくだから、このまま走って横浜横須賀道路(これも高速道路ではないが高速で走る道)に抜けて、三浦半島の三崎漁港にでも寄って、マグロでも買って帰ることにする。
 


三浦半島三崎漁港。


マグロ。安いけど当りハズレあり。




12Rにマグロを積んで。



そして、ひと月半ほど過ぎて、、、。




 2008年7月、また試作ブーツを持って彼らが弊社にやってきた。こんどは間違いなく私のデザインしたブーツR-06初回試作があり、そして改良されたR-05第2試作と共に私の作業部屋の机に並ぶ。

 おおっ、待ち望んでいたR-06、ついに試作ができたのだ。アイボリーホワイトの粋な姿、美しい。これならスタイリッシュな旅ができそうだ。(どんな旅なのだろうか、それ。)
 さっそく足を入れてみる。・・・なんだか甲周りがキツイぞ、ファスナー開口部も狭い。その他、気づいた点をチェックし、メモに残す。あくまで初回の試作品だ。やはり先行したR-05同様、完璧とはほど遠い。
 一方、第二試作のR-05。これは初回試作からの改良で、ほぼ理想に近いカタチとなっていた。これならイケそうな気がするぅ〜〜〜、あると思います。(天津木村を無断拝借)


 我が愛車12Rに乗ってテストしたブラウンだけでなく、クレープソール(ゴム系)のアイボリーカラーの初回試作ブーツも、このひと月少々の間、履き試していた。結果的にはクレープソールのほうが、はるかにデキが良かった。
 しかし、アイボリーという色は汚れが目立つ。それがもう片方の靴のソールサイドの塗料だと気づいたのが遅かった。このソール仕様ではダメなのに、すでに同じ方法のソールが今回もつけられている。さてどうしたものか、、、?
 もうこんな時間だ。居酒屋で考えようじゃないか。。。

右側の初回試作R-05アイボリーブーツ(左足)の汚れは、右足のソールサイドの塗料から。その隣りには、消えるのではないかとチャレンジした消しゴム。


下側のR-06アイボリーブーツは、これを見た某(モトナビ)K(河西)編集長が名づけた。なお「スター」は現代社会において、いまや死語となっている。



 第二試作までくると、だいたい理想に近いカタチにはなってくる。しかしこの時点でもレディースブーツの試作はない。それはなぜか・・・我々野郎どもには分からないだらけなのである。
 男性サイズを小さくしただけではレディースブーツはできない。専用の木型(靴作りにはなくてはならない型)はどんなカタチが良いのか。試作品を作ったところで、我々野郎達には試せないじゃないか。手ごわいぞ、レディースは。 ・・・そこで応援ねがったのが、花田氏と同じ課の女性スタッフ、Hさん。このR-05第二試作完成直後から加わってもらった。強〜い味方が一人増えたわけだ。


そして2008年の夏が過ぎ、、、。


 夏の間にも何度も打ち合わせをした。レディースブーツはHさんを中心として試作進行。と同時に、またまたソールを変更しより完成度の高いR-05/06の試作品作りもである。
 2008年9月末、ついにレディース用試作ができたと花田氏から連絡がきた。R-05第三試作、R-06第二試作とともに。さっそくリーガルコーポレーション本社に向かう・・・電車で。

Hさんは泣いているのではない。ぜったいに写真を撮らせてくれないのである。キレイな人なのになあ、、、。


 本社打ち合わせルームでずらりと並んだ出来立てのブーツ、第二試作のR-06、第三試作のR-05、もうこれらは最終試作といってよいデキではなかろうか。そして初めて目にするレディースブーツ初回試作、これも美しい仕上がりだ。よし、祝杯だぁ、Hさん、ご馳走しちゃうよ、今日は、、、「ごめんなさい、今夜は用事があるんですぅ」
 ・・・またいつもの安くて旨い本社近くの居酒屋で、また男ばかりで酒くらって。それはそれで楽しいのだが、、、。

今夜は笑顔で酒が進む。


クレープソールではなく、ちょっと異なるゴム系のナントカソール(正式名称忘れました)に全て変更。


 デキが良いと、気分もよく酒も進む。さ〜て、これからはカミさんにレディース試作を履かせて目一杯走り回って試してみよう。10月の目標走行距離は最低でも2000kmとしよう。
 ・・・どこ行こっかなあ、、、。

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