はじめまして。わたし、タモンと申します。
ご縁あってバイク業界の異端児たるペアスロープの、鹿革しぼり染めグッズ企画をさせて頂く事と成りました。
元々は普通の客だったような気がするんやけどねぇ。あれよあれよと気がつけば、というのはこちらの御当主こその成せる技なのでしょうか。固く括られた糸を解くその瞬間まで真の姿は誰にも分からない—。美しく繊細な絞り染めのそんなミステリアスな部分が、古来より女性を惹き付けて止まないんやと思っています。
グッズ完成の際にはこちらでご案内させて頂きますんで、是非お眼鏡に適いました暁にはお手元へと・・・。


完成の花開くその時があることが、絞り染めが唯一無二たる美しさの所以ー。

[プロフィール] 多聞恵美(たもんめぐみ)
兵庫県神戸市出身。モデライダー(モデル+ライター+ライダーの自身作の造語)として、オートバイ関連の雑誌やテレビメディアへの出演や執筆、はたまたイベントMCと三足以上のわらじを欲張りに履き替え活躍中の女史である。
執筆ジャンルはバイクやバイクアイテムのインプレッションから旅ものまで。MC業もバイク関連イベントが大半と、バイクどっぷりの人。代表作は「BikeJIN」誌で連載中の「多聞恵美のうまいモン、好っきやモン!!」など。
今回着用の着物はタモン母の和箪笥から拝借してきたという本人の私物。関西出身ゆえ京都とも何かと縁があり、京都のラジオ局でアシスタントDJ経験も。生放送だったので毎週、御所のお側に通っていたのだそうだ。
ロードレースの原点といわれるマン島TTレースへの取材をはじめ、サハリンを舞台にしたCross the border expedition2013に参加するなど、活動の幅は国内に留まらない。
更にオートバイウェアも手がけるファッションブランドのビジュアル広告モデルや、関西に本社を置くヘルメットブランドKABUTOでのデザインプロデュースを務めるなど、要するに、バイクの何でも屋ですねん。 年齢は偶然ながら夫婦坂工房とだいたい同い年。


鹿革の絞り染め3点。全てタモン購入の私物。人呼んで “タモンブルー” か?


私とペアスロープの接点、それを語るならばまず。私と大旦那・三橋氏との出逢いからお話せぬ訳には参りません。

印象深くファーストコンタクトとして記憶に残っているのが今から5年前、2009年の埼玉県浦和某所。(これに関しては夫婦坂通信2009年4月20日号に三橋氏の執筆があるので併せてお楽しみあれ。)
えらい遠いとこに呼び出されたなあという客大半を、まあしゃあないなあこの人の誘いなら、と納得させる男がその輪の中央に。その人こそ三橋氏をオヤッサンと呼び慕い、昨年までカタログのモデルも務めていた松下ヨシナリ氏でした。その会は松下氏のマン島TTレース初参戦の壮行会。そしてその場で、誰からとは言いませんが「モンちゃんこの人重鎮だよ、変わり者だけどね」と紹介してもらったのが・・・「娘さん?」なんて間違われるほど親しくさせて貰うようになるとは露にも思わんかった、三橋氏との出逢いでした。
ありし日の松下ヨシナリ
そういう訳で、私とペアスロープ。そして三橋氏との出逢いを語る上で絶対に外せない松下ヨシナリという憎めない迷惑男。ライターだけでなくMCもやる同業者として同じステージに立ち、現場で実技として教えて貰う事の多かった私は松下ヨシナリの弟分を自負し(妹なんて可愛いもんじゃない)兄と慕っておりました。だから三橋氏をオヤッサンと慕っていた彼が退いてしまったところ、もちろんそのままの位置には到底立てないけれど、弟としてお役に立てるのなら是非にと厚かましいながら、今回のお役目をお引き受けさせて頂いたのです。

なんか前置きが長くなりすぎましたね、みなさん飽きてません?大丈夫?話し出すと長いんが私のあかんクセなんです。・・・って言うても喋ってまうんですけどねぇ。

さて、やっと本題。どうしてグッズの企画をするにあたって、鹿革の絞り染めという素材を選んだのか。それは実はとても複雑なような、単純なような、なんとも “ペアスロープらしい” きっかけでありました。連載をしている雑誌内のコラムページにその訳を既に書いた事があったのですが、かいつまんでご説明すると「良いのがあるんだよ!」という三橋氏のお誘いに甘んじて・・・といったところでしょうか。
ホームページを眺めていて目に留まった、その頃ちょうど欲しかったサイズ感の2つ折り財布。せっかくならオーダーメイドで注文しよう!と電話してみたところ、それを受けて下すったペアスロープの主が、未だ世に出していない女性にぴったりの秘密の革がある、と言うではないですか。それってどんなんですか?と聞いたって教えてくれやしない。受話器のむこうに手を伸ばして首根っこ掴む・・・否否、おねだりに頰をつつく事だって電話じゃあ出来やしない。そんなもどかしさにまんまと釣られ、夫婦坂工房へと足を運んだのでした。

そして初めて見せられた “鹿革の絞り染め” という珍しく、とても貴重な素材の姿。通常、絞り染めというと絹や他の布生地が一般的です。そんな常識を変えてやろうと、やはり変わり者に違いないペアスロープの主人と、業界切っての革新者であろう京都の老舗染め物店いづつの若旦那がタッグを組み産み出した、技術も素材も伝統的でありながら全く新しい革素材。薄く薄く仕立てられた柔らかな鹿革があってこそ、そして老舗にあぐらをかかないユニークな発想があってこその “鹿革の絞り染め” なのです。

絞り染めといえば和服に親しい人で無くとも高級品とご存知だと思いますが、なんと江戸時代には奢侈禁止令(しゃしきんしれい)により着用のみならず販売までも禁止された贅沢品だったといいます。(このとき規制にあったのは主に鹿の子絞りだったようです。)絹等の素材も勿論ながら、ひとつひとつの文様を手作業で絞り括るその手間が、最大の贅沢で魅力の絞り染め。糸で括られた状態を一般の方が目にできる機会はきっとあまり多くはないでしょう。
ぐりぐりと絞られたたくさんの刺が生えているその様は私にはまるでウニのようにも見えます。そしてその絞りを解いた時、初めて現れる鮮やかな花模様は、今初めて呼吸を始めたかのように生々しく、なんとも言えぬ色気を孕んでいると感じさせるのです。

ですから、女性向けの小物をという企画案を三橋氏から伺った時に、ならばこれしかないと鹿革絞り染めを素材に選びました。
絹よりも我々ライダーにとって馴染みの深い、そして扱いにも慣れている革という素材。繊細でいて、強かさも併せ持つ “鹿革の絞り染め” 。ペアスロープがお届けする唯一無二の素材を、女性の皆様へ(男性用も少々)。
僭越ながら私タモンのプロデュースにてご紹介をさせて頂きます。
どうぞ御贔屓に・・・何卒、お願いを申し上げます。


3月30日 第一作、ちょっと更新 >>



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