ペアスロープでは、ブーツの製法にグッドイヤーウエルト式ダブルマッケイ式の2工程を使い分けています。それぞれに長所があるのですが、具体的にはどう違うのか。詳しくご説明いたしましょう。


グッドイヤーウエルト方式

構造上、ウエルト部分の張り出しが外観上の特徴だが、Rシリーズではペダル操作に配慮して極力張り出しを抑え、質感も高めている。
イギリスで生まれ、アメリカのチャールズ・グッドイヤー2世によって機械化され、世界的に広められたウエルト(細革)を使った製靴方法。堅牢で極めて耐久性に優れ、現在は主に高級紳士靴に用いられる。
丈夫で耐久性に優れ、ソール交換が可能であり、リブの内側に空間ができるために中物をたっぷりと詰められる。主にコルクなどの中物は馴染むと足裏の形に変形していくので、長時間履いても疲労が少ない。
ただし、構造上重量があり、工程が多くコストが掛かるため高価な靴になってしまう。
インナーソールを裏から見たところ。すでにアッパーとウエルトは縫いつけられている。写真の白い布地がリブ、外周の革がウエルト。黒い金属は土踏まずを支えるスチールシャンク。
コルクは板状に整形されたものが現在の主流で、R-05/06でも使用している。だが、R-01/02ではペースト状の練りコルクを使用。昔ながらの手間の掛かる作業ですき間無くたっぷり盛られる。これが極上の履き心地に繋がるのだ。
熟練した技術が必要な上、乾燥にも時間を要し、整形コルクに比べ生産性は段違いに劣るが、この工程こそ極上の履き心地を生むグッドイヤーウエルト製法の真骨頂と言える。



ダブルマッケイ方式
圧着式のアウトソールで靴底を2重にすることで、重量を抑えつつ頑丈に仕上がり、構造がシンプルなので水にも強く仕上がる。
主にイタリアで発展した、軽量で屈曲性に優れる製靴方法が「マッケイ式」。スリッパのようにインナーソールからアウトソールまでを一度に縫い付ける方法で、内側の靴底部分に縫製の糸が見えるのが特徴。ただし、その縫製糸が地面から水などを吸い込んでしまう欠点がある。(イタリアは雨が少なく、イギリスは雨が多いことが製靴方法に反映されていると考えられる。)また、ソール交換が困難。そこで、マッケイ製法でのアウトソールの代わりにミッドソールを設け、さらにアウトソールを圧着したのがダブルマッケイ製法。これにより、グッドイヤーウエルト製法以上の防水性を手に入れ、ソール交換をも容易にしている。
ブーツのアッパー部分。裏地にも革を使用した耐久性の高い仕様用。ダブルマッケイはアッパーのふちを内側に曲げてソールに縫い付けるため気密性が高く、アッパーとソールの合わせ目部分にオイルを塗り込めば防水性も有利になる。
より耐久性を高めるため、ほとんどの部品を革で構成。中物は厚みがあり足型に馴染むサドルレザー、つま先、かかとの芯となる月型にも革を硬化させて使用。スチールシャンクも強度の高いリブ付きを焼き入れして内蔵。
ソールを3層構造にすることで強度を確保しながら、アウトソールを圧着にして厚いブロックパターンのビブラムソールを使用可能にしている。グッドイヤーのような繊細さは無いが、ブーツらしい無骨でワイルドなイメージでは圧倒。