2006年3月3日

 今日このサイトを作っている3月3日、世間はひな祭りである。 だが我が家では15年ほど前に買った7段のおひな様を飾ることはもうない。その居間のスペースがバイクの車庫と化してしまったからだ。 それでもニッポンの伝統は残っているもので、毎年のように “はまぐりのお吸い物” が今夜の食卓を飾る。(たぶん) 
 しかし30の歳を過ぎるまで、なぜ“はまぐり”なのか知らなかった。アワビやサザエではだめなのか、そしてまた、少々いかがわしい意味合いで食していた。二枚貝でどうのこうのと分かったのは後のことである。
 そんなことはどうでもよいので先に進もう。
 

 ’05年の11月からリアルタイムでお届けした “合作ウエア”PSH-001の製作記も、3月に入り、生産品の検品作業を向かえて終了となる。
 終わってみれば 「なかなか良いデキだな」 と感心するも、当初の、紙と鉛筆で描いたデザイン画の段階では、かなりの不安を持っていたと記憶する。途中で 「ゴメンナサイ」 もありかな、と。 まあ、結果オーライですね。

 さてここで、なぜこんなに手間を掛け、ヒョウドウ社をも巻き込んでまで難解なライディングウエアを作ったか、その真意をちょっとだけお伝えしましょう。 
 ・・・真意というより「ぼやき」ですが、、、。


[ たくさんのお客様の質問から・・・これが原因 ]
安全、安全!安全性???

 ご来店やお電話でのお問い合わせのなかで、ここ数年、特に安全性についての質問が増えている。頑丈なプロテクションパッドが着いているのか、転けてもケガをしないのか、、、等々。
 装着されていれば安全ってもんではない。その着け方やその素材が重要。そしてそれには高度な技術を要する。この辺を理解してもらえれば、と製作記を発信した次第である。
 では、実際にあるお客様からの質問とその答えを述べてみよう。
DMF-13(左)とPSH-001(右)


Q:「おたくのフェルトパッドより、やはりハードパッドの方が安全でしょ?」
・・・さて、これには簡単に即答できない問題がある。単に衝撃に耐えるだけならハード+ウレタンパッドが有利。しかし硬い樹脂は低温時に破損しやすく、また、ヒビが入っていたり、劣化すると割れやすく、その樹脂が身体に損傷をあたえることもある。
 対してフェルトは耐久性が長く、引裂き強度に優れ、転倒してジャケットの生地が破れても、フェルトが身体を保護する。
 どちらが安全性に優れているかは、転倒の状況によって異なるが、総合的に判断すれば、ハード+ウレタンパッド仕様がやや有利ではないかと思う。

Q:「着心地の良いハードパッド プロテクションがほしいんですぅ」
・・・それは無理な話ですねえ。PSH-001でも4回も試作を作り、考え抜いたウエアではあるが、やはりハードパッドの存在感を消すことはできない。フェルト仕様のような優しい着心地までとはゆかないのが現実。安全性の代償として、多少の我慢は仕方のないことでしょう。

Q:「ほかの多くのメーカーはハードパッドを装備してるのに、おたくはなぜ着けないんですか?」
・・・筆者は、ハードパッドがだいっ嫌いなんです! って言ったら話が終わってしまうので、再度説明しましょう。この製作記の第二話にも書いたが、たんに装着するだけなら猿でも出来る。重要なのは、転けた時に、ほんとうに機能するか? デザインがくずれないか? ということ。 これがそう簡単なことではないのですわ。だからヒョウドウさんに協力願ったわけ。

Q:「PSH-001は転けても痛くないですか?」
・・・こんな質問、あるんじゃないかと思ってたら、現実にきてしまった。いくらレーシング用のパッドを装着していても、レーシングスーツのプロテクション性にはとてもかなわない。そしてそのレーシングスーツであっても、転けても無事かといえば、そうはいかないだろう。 と、真面目に述べてしまったが、ホンネは「バイク自体が安全な乗り物ではない。転ければどこかしらケガをするだろう。究極の安全性を考えたら、バイクに乗らないことでしょうねえ」(こんなことを言ってしまったら、きっと叱られるでしょうね)


 なにはともあれペアスロープ・ヒョウドウ合作PSH-001は出来上がった。その完成度は当初想像していたよりも高く、両社の自慢のできる逸品となった。
 しかし、生産量が少ない限定品のため、001を手にしてその着心地を味わえる方は、全国でも少ない。ましてや不幸にも転倒して、プロテクション性能まで確認できる方はほんの一握り。まあ、すすんで確認するようなことではないが。
 
 さて合作のウエア作り、これで終わりとはしないつもりだ。 001、という品番が示すように、より高度なテクニックを駆使したライディングウエアをこれからも作ってゆきたいと思う。
 先日、兵頭社長にお礼の電話をさしあげた。
 「今回の件はたいへん苦労をかけました。連続してサマーメッシュの002を作ったけど、次はもっともっとレベルアップさせた“003”を開発しようではないですか!」
 「えっ?、まだやるんですかぁ?、001もほんとに苦労したんですからぁ。次はどうかほどほどにしてくださいねえ。」
 「・・・やだ!」



2006年3月3日 三橋弘行
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