縫製産業のメッカ、広島県府中市にあるジーンズ工房。かつてのヴィンテージデニムブーム時には縫製を待つパーツが軒下まで積んであったとか。
その頃は数の消化に手一杯だったが、ひと段落してようやくじっくりとものづくりに向かえるようになったそうで、今回のチャレンジも快く引き受けてくださった。


創造は破壊から!?
厚地用の特殊なミシンといえど、生地が何重にも重なる部分の厚みがハンパじゃないため、普通のジーンズに合わせ調整された状態では途中で壊れてしまって縫えないことが判明。どーすんだ!?

こりゃあもう…ミシンを改造するしかないねぇ…。

糸の張り具合から2本針の間隔まで、細かな部品交換と調整をしては試し縫いを繰り返す、まるでキャブレータのセッティングのような作業からスタート。デニムが丈夫過ぎて、試し縫いの途中で糸が切れたり針が折れたりが何度も続いたそうだ。
しかも場所によって何台ものミシンを使い分けるため、毎回大仕事…。スンマセン。


「合わせ目はこうして重ねて巻いてあるから厚いでしょ?だからこれだけ厚みのある生地だと、そのままじゃ縫えないんだ。」と工房オーナーの西沢氏。

部分的に生地が厚くなってしまうと見栄えも悪く、着心地にも悪影響がある。ムリヤリ縫えたとしても体にゴリゴリ当たって気持ち悪いし、出っ張っているとそこだけ擦れて傷みやすくもなる。まして、バイク用のジーンズだ。履き心地と耐摩擦強度は重視したい。

そこで、仕上がりの良さと実用性を両立する、重なりをずらして段差を抑える製法が生み出された。見た目にも普通じゃないジーンズの主張ができているハズ。


完全一貫ハンドメイド。
ジーンズの縫製は、バックポケットだけを作る工房、でき上がったパーツを集めて組み立てる工房などの何軒かの工房が分業するのが一般的。
しかし、このジーンズはすべての縫製をひとつの工房で行う。非常に珍しい(効率の悪い)作り方だが、利点もある。あちこちで縫製すれば使う道具や人も変わり、部分部分で微妙に仕上がりが異なるが、それが無い。とってもぜいたくな作り方なのだ。




板を切るごとく!?
中学の木工室にあった、ミシンに似た形の卓上糸ノコをご存知だろうか。
織り上がった未洗いのデニムは、バリバリに糊が効いている。21オンスともなると非常に固く、全体を振り回しながらでないと縫えない。それがまるで、卓上糸ノコで板を切っている姿のようなのだ。おかげで1日縫い続けると翌日はひどい筋肉痛だとか。


曲がらないし。。。

折れないし。。。

縫製後はボールやら石やらを入れて2度水洗いを掛け、穿きやすく仕上げてあるのでご安心を。
同時に縮み防止加工済。



穿き込む楽しみを

裾の仕上げにはユニオンスペシャルを使用。
ユニオンスペシャルは、下糸が無く、1本の糸で縫えるチェーンステッチ用工業ミシンのひとつ。ジーンズ好きには特に有名だが、その理由は縫う時のねじれが他のミシンより強くて、裾のアタリが出やすいから。

本来、生地がねじれてしまうのは良くないので、現役当時は不人気ですらあったユニオン君が、ジーンズのおかげで今となってはプレミア付きの伝説のミシンになってしまったというわけ。

店頭での裾上げはチェーンより丈夫な本縫いだが、うまくアタリが付く様に工夫して縫っているのでご心配なく!



色落ちが楽しみな裾のねじれ。

仕上げをしてようやく完成!





21オンスデニムアイテム
今回製作工程をご紹介したジーンズの他に、同じ21オンスを生デニムの感触が楽しめるよう、ノンウォッシュのまま使ったバッグも製作。合わせて使えばコーディネートは完璧!左の写真でほぼ実際使用する状況のサイズ感。どうです?いいでしょう!
21ozジーンズ:29〜36インチ 詳しく見る
バッグ:BY-1デニム 詳しく見る




履き込んで自分だけのジーンズに!




おしまい。
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