撮影隊一行が正門をくぐると、すぐ正面には武重氏ご自宅の玄関がある。2週間前、下見に来ている筆者はすでに分かっているが、蔵元 武重本家酒造はその奥なのだ。



感心して駕籠を見上げる単車オヤヂ氏。
 当主のサイトでご自宅を、“明治42年に新築された。棟梁名は不詳であるが、宮大工の流れを汲むものと推測される” と書いているように、寺というか宮といおうか、ところどころにその面影が残る重厚な作りだ。そしてなぜか玄関には江戸時代のものと思われる“駕籠(かご)”が吊り下げてある。
 その駕籠、いわゆるその時代の下々の庶民に愛用されたものではないことが分かる。酒造りを営む前の江戸時代は、いったいどういう家柄だったのであろうか。筆者の先祖とまったくちがうことだけはあきらかだが。


まずは足元から。
 当主武重氏に、どこか腰を掛けてブーツを撮るところはありませんか、と訪ねたら、ご自宅の中庭に案内された。そこには明治時代の母屋の縁側、そして向かい側には江戸時代からの奥座敷がある。
 それにしてもバイク用のブーツの撮影にご自宅までお借りして、なんだか恐縮極まりない。

「ちょっとだけ待ってください」と、ほうきを持って掃除しているのは当主の武重氏。ここまでしていただいて、ありがたいことです。

中庭のコケ。美しい緑。


「めったに見られないから、よ〜く目に焼き付けておきなさい!」と息子に言うオヤヂのほうは、この中庭の風情をカメラに焼き付けさせていた。


臨時靴磨き屋は筆者。
 さて足元の撮影だ。偶然にも被写体になるブーツの製造元、リーガルコーポレーションと、この母屋の縁側の歴史はほぼ同じだ。ともに1世紀を越えた趣きがある。それならばと、新品より履き込んだブーツを、その場で磨いて撮ることにした。
保革クリーム“ディアマント”とツヤ出し“ポリッシュ”は準備よろしく持参。
 そして撮影。半年間、履いて走り回ったブーツ、やはり新品よりいい味がでてるでしょ。ちょっとピッカピカに磨きすぎちゃったけど。。。





 “ジャケットより、足元が先決”・・・これ本心です。でもすでに優れたジャケットを買ってしまった、、、という人も、今からでもけっして遅くはない。さっそく足元を見直してみようではないか。


ペアスロープの足元、全6種勢揃い。(※ショートA7は2008年秋現在ブラックのみ)


 ブーツを撮り終え、玄関の脇の通路に入ると、また門がる。筆者ではその門の説明ができないので、当主サイトの言葉を引用しよう。

 “主屋と店を繋ぐ門。実際には中門と呼ばれている門は二つある(ややこしい)。詳しく言うと、こちらは奥座敷へ入る門で「本宅の中門」。もう一つは「通りの中門」。後者は、さてどこにあるでしょう”

 ここで意外なことに気づく。単なる酒好きの私にとっては、蔵元の社長は雲の上の存在である。下見の時や、この撮影日も幾度と話をするが、冗談などとても通じないだろうと、言葉には気を使う。でもユーモアだってある人なんだなあ、と。

 その中門の通路には、牧水にまつわる品々や昔の酒造りの道具が展示してある。それを見物しているのは親父たちのみ。学生どもには興味がないようだ。

それぞれ名称も記してあるが、それでも意味不明の道具あり。


そして手先。

 足元も大事だが、ブレーキ・クラッチ・スロットル、そして各種スイッチまで操作する手先のグローブも、これまた大事な道具だ。ここだ、ここで撮ろう、とグローブ撮影を開始する。


※ギターは筆者の所有物。蔵元とは無関係です。


 この弊社サイトをじっくりご覧の方々はすでに承知でしょうが、弊社グローブは四国香川県で作っている。その香川県は全国一のグローブ生産を誇るが、しかしバイク用グローブにおいては日本の総販売量の5%にも満たない。いまや95%以上が海外製なのである。
 いや、グローブだけではない。ブーツだってウェアだって、我がニッポン製の愛用者は5%、いやいや、3%くらいではなかろうか。・・・そんなこと言ったって高いから買えない!、、、って声も多く聞かれる。でもねえ、仕方ないんです、弊社ペアスロープはニッポンでしか作らない!って決めちゃったものだから。


 グローブは、馬、鹿、北米産牛革、和牛、と4種類の素材でそれぞれ作っている。さてどれが優秀なのか、、、?
 今まで筆者は個人的な好みをあまり述べていない。ましてやどれが一番優秀な品なのかもしかりである。でも、たまにはストレートに言ってしまおう。

 北米産牛革は普通以上のクオリティー、和牛は優れた耐久性、馬は話題性での所有感。そして残るは、
 ・・・・・ “鹿”のグローブ、ほんと〜にいいですっ!

 あぁ〜、言ってしまった。これ、あくまで個人的な好みだけど、馬、牛、申し訳ない。。。 (こんな感じで酒のことも直球で書いてしまおうかな。でも武重社長が気になって、、、)


写真でもきっと伝わるでしょう、優しい感触と優れた操作性が、、、。


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