2006年10月20日 送信



 2006年7月上旬、信州安曇野 穂高で天蚕(てんさん)糸を手に入れ、すぐさま鹿児島の関絹織物に送り、究極の本場大島紬を依頼した。
 究極の、、、 そう、この言葉はそれが織り上がるまでとっておいた。だからメニュータイトルや予告だけにとどめ、“絹の道”本文では「究極」という言葉 を故意に使っていない。どのページも 「極上」 までである。
 同年9月初め、長さ10cmほどの試験織りが鹿児島から届き、その格子柄を確認。そして10月半ば、ついにその「究極」が織り上がる。穂高の天蚕と群馬赤城の家蚕を融合させ、名門 本場大島紬織り元 関絹織物手織りの “夫婦坂網代格子織り” だ。


[タテ糸] 蓬(ヨモギ)染、椎木(シイキ)グリーン(奄美泥藍x椎木染明礬)、椎木グレー(車輪梅x丁子x椎木泥)
[ヨコ糸] 天蚕糸、椎木グリーン泥染糸、椎木グレー
以上を網代織り。・・・これで凄い!と思うなら、間違いなく“きもの業界”の人でしょう。


 大島紬は織る前の準備に時間がかかる。特に初めての天蚕使用とあっては、試験織りやその他糸の染色やらと多大な手間。
 そして織り初めから、毎日こつこつと45日かけて2反(約24m)が完成した。
 織り元がどれだけ苦労したことか、筆者のようなシロウトには計り知れない。
 
 弊社ペアスロープは創業時からタータンチェック(格子柄)を好んで使っている。コーポレートカラーはグリーン系。
 そこで今回の依頼もグリーン系格子柄となったわけであるが、“網代織り”と呼ばれる複雑怪奇な格子柄は、すでに並のものではない。それに加えて高価な天蚕糸をからみ合わせたのだから、これが極上を通り越して“究極”と呼ぶ由縁なのだ。


 それにしても、ニッポンの伝統と文化を融合させた工芸品、いったいどのくらいの価値があるのだろうか興味も湧く。
 ちなみに、同じ関絹織物で織られた手織り格子柄(第5話のコットンリバーシブル用)が、市場価格一反40万円前後なのだから、その何倍になることやら。
 まあ、販売目的で織ってもらったのではないので、そんな興味を持つことなど邪道。モノの価値とは、おカネで判断するよりも、心の問題。世の中、カネを積んでも買えないものはあるのだ。(と、見栄を張るが、やはりちょっとは気になるもんです)


残念ながら、写真では淡い絹の輝きが表現できません。

 悩む。 あまりにも貴重なものだから、うかつには手をつけられないでいる。
 作務衣を作ろうか、リバーシブルジャケットにしようか、それとも、、、。

 見せびらかしの自慢話だけでは、これをご覧の方々には、いやがらせとしか思えないことでしょう。
 よって、小物なら何か考えて、記念にほんの少しだけ販売しようと思う。
 ジャケットならこの2反で3着作れるが、日本広しといえど手を挙げる人は、筆者のような馬鹿者くらいでしょう。おカネの話はしたくないけど、やはりかなりの高額ですからねえ。万が一、筆者以外に馬鹿者、いや、“粋”な人がいたら、どうぞご連絡を。その時は考えます。



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