本場大島紬、手織り、機械織りの反物も入手し、そのもとの材料となるカイコもたっぷりとご案内した。さてここからは弊社夫婦坂工房の出番である。
伝統工芸品の本場大島紬を使って、夫婦坂がどうやって何を作るのか、、、ご覧ください。


2006年8月25日発信

 ナイロン製品や、もっとも得意な革製品なら手馴れたものだが、本場大島紬、いや、ニッポンの伝統である絹織物を使った製品など、未だかつて作ったことがない。ここはかなり気を引き締めないとならないだろう。 よって、気合いを入れるために、製作担当者は作務衣(サムエ)着用で作業に挑む。(※作務衣は通販で買ったナンチャッテ和モノ)

 第一作目は天然繊維どうしの組み合わせ、綿(コットン)と絹(シルク)のリバーシブルジャケットに挑戦する。機械織りもあるが、こともあろうに手織りの大島紬を使った作品作りだ。材料費だけで弊社の革ジャン2着分、「失敗したら、買い取ってなっ!」 に製作担当は顔が引きつる。そう、この緊張感が良いのである。
大島紬ジャケット担当の小塚。かなり真剣な手さばき。



1m以上あるナイロン繊維の生地幅と違い、手織り大島紬は約38cm。身幅片側でギリギリの寸法。



裁断部分がほつれてこないよう、ロックミシンをかける。この作業は弊社他の製品も同様だが、目に見えないところにコストをかけるのも夫婦坂流。


手織り本場大島紬と比べ、100分の1の価格のコットンだが、手を抜かない縫製。(※コットンが安すぎるのではなく、前者が高額)


裁断を失敗したら、もう全てアウト! だからマチ針を刺して慎重にカットする。



ポケットのフラップ。垂直・水平だけでなく、左右フラップもまったく同じ柄合わせをおこなう。なお、大島紬使用の製品には専用織りネームを装着。


コットン側のエリ裏には、さりげないほど小さな、しかし誇らしげな “夫婦坂工房” 織りネーム。

 数時間おきに写真を撮り、たった6枚の画像説明で作品を完成させると、なんともそっけないが、その作業はたっぷりと20時間がかかっている。手織りの大島紬を織り上げる時間を足したら100時間となろう。
 こんな非効率的なジャケットはどこにも売ってないだろう。いや、作ろうという発想自体がどこもないだろう。
 ・・・でもしかし、、、いささか高額であっても、軽〜く、サラッとした絹の肌ざわり、そしてニッポンの伝統工芸品を着るというのは、極上の気分、、、それしか言い表せないんですなあ。申し訳ないことに。。。



[ 手織り大島紬仕様のリバーシブルジャックは作品ですが、その“作品”として評価していただいた方には、月に一着程度なら販売しようかとも思ってます。しかし通販はできません。※詳しくは次の第五話でご案内 ]



 大島紬を使う品はジャケットだけではない。ハンチングキャップやキーホルダー、ケイタイストラップなどのグッズまで、数々の品に挑戦。
 特にハンチングは、いろいろな組み合わせができる。ステア牛革、キップ牛革、和牛、馬革と。でもやはり“和”のステイタスとしては“和牛と手織り大島紬”の融合だろう、共にニッポンの素材でニッポン製・・・ただしコストを無視すればの話だが。
 しかし、高額なものばかりを作ってもいられないので、帆布(はんぷ)との組み合わせを試みる。出来上がってみると、これがなかなかイイ。機械織りといえど本場大島紬を使い、量産のきかない夫婦坂工房製なので、低価格に挑戦、とまではゆかないが、現物を見れば納得できる価格にはなると思う。 おっと、キーホルダー、ケイタイストラップも最高の仕上がりだ。
革小物試作担当は手先が器用な神藤。スタジャン等の細かなマークもこの男。



これはハンチングのツバの作成。
きれいなアールをだすには、余分な革をカットしながら、コツコツと手作業で折り返す。いちばん時間のかかる部分だ。
和牛に手織り大島紬を使った、極上ハンチング。
頭にかぶせたら、高価な大島紬は見えないが、その柄合わせにも正確さを要す。このハンチングの場合、どちらも主役だから。
意外と思われるかもしれないが、ミシンによる縫製作業よりも、それ以外の手作業のほうが時間が長い。
もうひとつ、コストなど無視した“馬革と手織り大島紬”のキーホルダーやストラップを作ってみた。
かなりデキがいいので、限定販売しようかと思うがどうでしょうか?
でも1個1時間もかかり、高価な材料費・・・大奮発価格でも3000円にもなってしまう。やっぱりダメかな。筆者はほしいが、、、。


 2006年8月現在、9月に出来上がるカタログ掲載製品以外にも、いろんな“和”にチャレンジしている。
 鹿児島の織り元、姫路の革加工、そして夫婦坂工房。それぞれの職人の技・・・次の第五話では、それら極上の品々をご案内します。


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