琴平街道(国道32号線)を高松方面へ向かうと菅原道真公が奉られている、滝宮天満宮の東に陶(すえ)という地名があります。そこを北へ曲がります。何てことのない、交差点に小さなうどん屋さんはあります。ここも「小んまい」(ちっちゃい)看板があるだけ。
 うどんは、ご主人と思われるおっちゃんが絶え間なく作り、それを順番におばあちゃんが茹でていき、茹で上がりを食べる……ちょっとお客がすいたらせいろに並べて用意するタイプ。せいろのうどんは、茹釜で、さっとゆがいて、あらかじめ別の釜で用意した出汁をかけるか、醤油にて食べる。もともとは玉を地元の注文に応じて作る製麺所なのですが、ちょっと食べさせて……という人が多くなって、ちいさなテーブルとイスを置くようになったのでしょう。その飾りッケの無い風情に感動する都会人は多いようです。
 製麺所では、たいていうどんが新鮮なので、いつ行ってもかなり高レベルのうどんが食べられます。うどんの茹であがりを見極め、釜揚げを狙うのも一つの方法です。
 こちらの麺は、ずばり男性的。初めての人は硬いと感じるかもしれません。口に入れるとまたズシっと重く、存在感十分。いざ噛んでみると歯ごたえも十分だけど、なのに嫌みになる重さじゃないんです。あくまでも軽やかに喉を通っていく。ずばりおいしいのです。僕このうどん好きです。それと付け加えて粘り……。最後にモチっとする食感がありました(これは国産小麦によるものか?)。
 それと粉のほのかな香り。このあたりの芸の見せ所が経験によるものだと思われます。
 出汁はそれほどのものじゃないんでしょうけど「ウチは麺で売ってます!」という雰囲気ありありで親父さんの笑顔も自信のあらわれか……とっても感じの良いお店でした。ここも9時半〜13時までの営業。午前中に行くのがベストでしょう。おばあちゃん特製のテンプラも数に限りあり。午後に行った時は、テンプラにありつけませんでした。
「なかむら」が女性的な麺の代表格なら、「田村」は男性的な麺の代表格として僕は位置づけます。さがせばおいしいお店はもっとあるのかもしれませんが、きわめて高いレベルにある麺だと思われます。

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