8時、ビジネスホテルのロビー集合。馬鹿っ晴れでもなく、曇りでもない曖昧な空は、絶好のうどん日和。本日は、うどん先生が調べに調べて、厳選した3軒のうどん屋に連れて行ってもらい、讃岐うどんはもういいですぅ〜カンベンしてください〜という悲鳴を上げるまで胃袋に麺を満たす。その後、白鳥町のJRPへ向かうっていう寸法だ。
 初日のフェリーから口々に“うどん”“ウドン”“饂飩”と自らを洗脳してきただけに、朝から興奮気味のうどん初心者3人。大島さんなどは、朝からうどん三昧ですかぁ、と食べないうちから、おなかいっぱい気味。そんな3人にうどん先生はこう切り出した。
「今回、選んだ3軒は製麺所系のうどん屋です。製麺所系というのは、自分のお店で麺を打ち、すかさずお客さんに食べさせるという、究極のカタチです。それも3タイプを揃えましたから、打ち立て、茹で立てを存分に味わって下さい」
 メガネの奥のつぶらな瞳をキラリと光らせながら、鼻の穴をフガフガさせていらっしゃる。「先生ぃ、質問です。どこのお店でも手打ちなんじゃないんですか?」
「手打ちの看板が出ていても、機械で打ってないだけで、その店が打っているとは限らないんです。製麺所から取り寄せる場合もありますから。だからこそ、製麺所で食べる麺はうどんのホームラン王なんです! でも、所詮100円とかの食べ物ですからねぇ、それも踏まえて味わって下さいねぇ」


 フォローしながらも鼻息の荒い先生を先頭に、とりあえず9時開店の「なかむら」へバクバク隊は出発ぅ! 当然、うどん屋に行くのだからホテルでの朝飯は抜き。
 ジス・イズ・ア・サヌキ・スタイル……なんちて。


 讃岐冨士 飯野山
 先頭を走るうどん先生の運転が、やけにキレが良い。朝だからか、うどんだからか、地元だからか、新婚の嫁さんの匂いがするのか……。昨夜よりも張り切ってる感じ。
 ものの15分程度で「なかむら」到着。平日の開店前だというのに、もはや数人のお客さんがウロウロしている。壁の外に並ぶ6本のプロパンと屋根からニョキッと突き出た煙突、外にある簡易ベンチが、なんとなくうどん屋を感じさせるが何かが足りない、ほどなくするとのれんがスチャっと掛けられて準備万端、さぁ、きなはれタイム。



「舌代」とはなんと粋な。
ここ飯山の中村流のシアワセは、
ねぎを自分で好きなだけ切って
生姜も大根も自分ですって、
天婦羅をのせる……。
これが幸福までの15秒なのね。
午前9時〜午後2時営業
第1,3,5日曜日定休
朝イチからお客さん多し。


「釜揚げのヒト〜、釜揚げのヒトいる〜?」
 店の中から、声が掛かる。こちとら初心者なので、小さな店内に上がる湯気に誘われて「はいっ」と答えてしまう。訳も分からずの「はいっ」なので、後でうどん先生に尋ねると、釜揚げとは、打ち立てを茹でて、水で洗わないもの。つまり1日のうちでも、タイミングが合わないと頂けない貴重な麺だという。ってことは、アタリなんですかっ!?
 そう聞くと、訳も分からず「イエ〜イ」とか言いながら、ドンブリと箸を前後に揺すりたくなるねぇ。分かるかなぁ、分かんねぇだろうなぁ。
 そんで、異常な興奮状態のまま、「釜揚げ・大・卵・ダシ」で250円という組み合わせ。三橋さんは、「熱いの・小・ゲソ天・ダシ」で200円という組み合わせ。大島さんも「熱いの・小・ダシ」で100円という組み合わせ。初心者3人の感想は、同様に「美味いっ!!」だけ。申し訳ありません。こんな気の利かないレポートで。

写真なんかとってる場合じゃないす、
それでは、サッソクいかせていただきます!
ツールツル、
シコシコ、
シュッパッチョ
「うっめぇぇぇ〜!!!!!!」
って、俺はヤギさんかよぉ

 でもね皆さん、分かってやってください。何日間も、讃岐うどんの幻を追い続け、前夜の居酒屋うどんでも満足し、挙げ句に朝食抜きでやってきた、先生推薦の1軒目。「美味い」以外の何を言えってんだ、すっとこどっこい……なのですよ。
 麺とダシの美味さは当然ながら、ゲソ天が「大王イカかよぉ」と突っ込みを入れたくなるほど大きくて、「マシュマロかよぉ」と突っ込みを入れたくなるほど柔らかい。三橋さんもアタリじゃないすかぁ。とハズレなし。駄菓子屋のクジじゃねぇっつうの……。


うどん(小)¥100に ドでかいゲソ天¥100、しめて200円也

 満足感にドップリ浸りつつ周囲を見やれば、のれんを掛けたおじさんも、「釜揚げのヒト〜?」って聞いてたおばちゃんも、お店の人じゃなくて、お客さんなんだ。んで、食べ終わったら、すぐに帰っちゃうんだよね。素晴らしい関係ですたい、感動ぜよぉぉ、尾原さぁん、アタリですねっ!! でもね「あぁ、もう一度冷静になってなかむらに行きたい……」というのが初心者3人の正直な感想だったりして。

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