平家屋敷 阿佐家
日本三大秘境の一つで、別名「日本のチベット」とも呼ばれる、徳島県三好市祖谷(いや)。標高2000m近い山と深く切れ込んだ谷に囲まれた村では、素朴で懐かしい味をしたソバを打てて味わえると聞き、いそいそと出かけてきました。

 ウチから直線距離にすると、そんなに遠くはない祖谷地方。ツーリングマップルでも、2ページめくるだけで目的地に着いてしまうほどの距離なんです。

 しかし、いつまで走ってもなかなか目的地に着かないのが剣山周辺のの山間部。地元ながら、「四国って本当に山深い」とため息も出るっていうもの。

 すれちがう人も車もほとんどいないクネクネの山道と格闘すること麓から2時間。ようやく祖谷の谷にたどり着くことができるのです。


 でも、今のようにクネクネながらも立派な? 道路が付いたのが、ここ50〜100年の話。それまでは、”歩き”しか行く方法がなかったのですから、この祖谷の谷の隔絶性は相当なものだったのです。

 高校時代の国語の先生から聞いた話ですが、昔の日本語にあったとされる発音やイントネーションが祖谷には残っているとの事。古くから伝わる文化や生活が、今でも息づいているのかもしれません。


 それと祖谷で忘れちゃならないのが、「平家落人伝説」。源平合戦の屋島の戦いで敗れた平家の侍が、この山深い所に逃げ延びて、暮らしていたという伝説があります(冒頭の写真は平家が先祖と言われる屋敷です)

 追っ手から逃れるために、いつでも切り離せるようにシラクチカズラという蔓系の植物で作った橋などが有名です。



 さて、今日の目的はソバ打ち。
 このあたりの名産であるソバは、焼き畑(今はどうだか知りませんが)で開かれた、山間の傾斜地で育てられます。もちろん地元産100%のソバ。

 祖谷ソバは、関東や信州でたべるちょっと「小粋」なソバではなくて、どちらかというと「素朴」とか「懐かしい」という言葉が似合うソバなんです。
 麺は太短くて、ソバの実のザラザラが少し舌に残るような感じ。でも、ソバの風味が少し漂っていて、なんだか悪く言うと「田舎風」なんですが、これが実は美味い。うどん党の僕にとってのソバの原風景って、実はこの「祖谷ソバ」なんです。
 村内には、何件か祖谷ソバを食べさせてくれる店があるのですが、食べて帰ってくるだけじゃ面白くないので、ソバ打ちをどこかでさせてくれないかインターネットで検索することに。
 そしたら、あるじゃないですか、「いやしの温泉郷」というところに。その名も”そば道場”。早速電話をかけて申し込んでみたのです。
 


やはり基本は、格好から入る私。
和食職人用のウエアと帽子を自前で買い込んで、
ソバ打ちに挑むのでした。
(向こうのスタッフの人、かなり引き気味でしたが・・・)


和食ウエアじゃ、ズボンが汚れるので、
エプロンを貸してくれました。



蕎麦粉

一般的な祖谷ソバはつなぎを使わないのですが、ここでは素人でも打ちやすい二八を使うことに(小麦粉2に対して蕎麦粉8の割合)。右は先生の松浦さん。

水回し

加える水の水分量は、季節によって違うらしいのですが、指を立てて素早くかきまぜるのがコツ。水は4回ほどに分けて入れて水気がまんべんなく回るようにします。

こねる

水分によってまとまった粉を大きな玉にしていきます。つぶしてはこねるの作業を繰り返して、最後に折り重ねた所に空気が入らないように円錐形に練っていきます。

のばし

玉を手で広げるようにのばしていき、ある程度の大きさになったら麺棒でのばしていきます。

切る

四角くのばした麺を折り畳んでから、定規となるコマ板を使って切っていきます。最初は先生から器用だとお褒めの言葉を頂いていたのですが、次第にうどんのように太く・・・。

完成

一回の体験で5人前のソバを打つことができます。なお隣の食堂で茹でて食べることもできます(試食用の1人前の調理代は込みとなっています)。


さて試食タイム

まずは、「かけ」から。祖谷ソバ独特の蕎麦粉の香りが口の中に広がってきます。ツルツルじゃなくて、ボソボソっとした食感もつなぎの少ない祖谷ソバらしさか・・・。かけの出汁は、あっさりとした透明出汁の関西風。ゆずの香りが食欲を引き立てます。

そして、お次は「ざる」に。こちらの方がより、蕎麦粉の香りが強い気がします。ざるは、麺をできるだけ細く、太さを揃えた方が、喉越しが良くておいしいですね。切るのが雑になると、ざるには向いていないですね。(何本かうどんのようになったソバも・・・まあ自業自得ですね)

 先生の松浦さんに聞くと、昔の祖谷ソバは、もっとボソボソの食感で、太く切れやすい麺だったらしいのですが、、このまま忠実に再現しようとすると、祖谷ソバを知らない(関東方面の)お客さんが、「これは蕎麦じゃねぇ・・・」って言ったそうな。(そりゃ麺だけじゃなくて出汁の味も関西風だから無理はないか・・・)

 だから、いろんなお客さんにも喜んでもらえるよう、少しつなぎも増やして、今のような二八のスタイルになったそうなのです。もちろんこちらの方が打ちやすいですしね。


 とにかく、讃岐うどんでもそうなのですが、「打ちたては美味い」。しかも自分で苦労して打ったのですからその美味さは格別なのでした。

 麺打ちと試食の所要時間は大体2時間くらい。5人前の麺を打って試食して2625円也(持ち帰りも可能です)

 ツーリングの行程に、ソバ打ちの体験、組み込んでみてはいかがでしょうか?美味しいし、楽しいし、大勢の仲間で打つことも、僕のように独りの体験でも先生がマンツーマンでお相手をしてくれます。オススメしておきます。



いやしの温泉郷にも文字通り温泉がありますが、
今回は、更に下流の松尾川沿いにできたばかりの温泉
「松尾川温泉」でひとっ風呂浴びていくことに。
硫黄のニオイのするヌルヌル泉で、
今年6月にできたばかりの施設です。500円也。



祖谷で、もうひとつおいしい物といえば、川魚。
アユやアメゴを炭火でパリパリになるまで
焼いていて、もちろん頭から尻尾まで全部食べることが可能です。

西祖谷かずら橋の近くにいっぱいお店があります。500円〜。





 祖谷って、厳しい自然条件に囲まれた土地でいて、他地域との交易もままならなかった場所なんですが、何とかそこにある物を使って、美味しい物を作りたいという気持ちが、独特の食文化を発展させたのかもしれません。もちろん今回のソバもその一つじゃないでしょうか。

 それとソバって、うどんと較べると、高級そうなイメージがあったのですが、ここのソバは、人々の生活にとけこんでいて、何というか”よそ行き”じゃなくて、”おもてなし”の心が込められている・・・そんな所が魅力的に感じたのかもしれませんね。
 
*ソバ打ち体験は、前もって予約が必要です。
*祖谷地方へは、国道32号の徳島県と高知県の県境付近大歩危(おおぼけ)から入るのが一般的です。その他のルートは、国道といえど過酷な山越えが待ち受けています。常時迂回路が無い道路工事などをやっていて、到着時間が読めなくなる・・・ということも多々ありますのでご注意を。

徳島県の道路情報 http://www1.road.pref.tokushima.jp




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