五色台から坂出市内を望む

第十回 涅槃(ねはん)の道場編 その二

二輪で遍路旅は、いよいよ最後の日。思い返せば、ここまでたどりつくのに一年と少々。最初、単なる思いつきで始めた旅だったのですが、回を重ねる毎に増える情報や経験は、これから旅立つ”遍路ライダー”に少しでも役立つかもしれませんね。そんなことを感じながら”有終の美”を飾るべく旅に出かけました。




 最初どうも気恥ずかしかった遍路ウエアの白衣ですが、今となっては、堂々と店でもどこでも入っていきます。ここまでくると少し汚れた遍路着もライディングウエアとして板に付いたものです。
 そして「ぶっせつまか」で始まるお経を、なんとなくバイクに乗っていても鼻歌代わりに口ずさむようになってきたものです。なんと信心深くなったことか・・・。
 今回の旅は一日で88番まで一気に終わらそうという強行軍です。


 前回は、弘法大師生誕の地、善通寺にて旅を終えましたので、今回は同じ市内にある、76番金倉寺から旅が始まります。

76番金倉寺。願をかけながら回すと叶う大きな念珠があります。
77番道隆寺。本尊の仏像に祈ると眼病が治るというらしい。
78番郷照寺。地下にはミニ大師像がいっぱい。

 78番郷照寺は、意外にも鎌倉仏教の時宗も奉っています。要するに88カ寺は、宗教・宗派なんて問わない・・・「来る者を拒まず」といった所かもしれません。最近は遍路姿の外国の方も多くみかけるようになりました。

郷照寺門前の、高橋地蔵餅本舗にて一服。つきたての草餅を食べました。おはぎもあったので、買ってお持ち帰りにしました。餅は100円〜。

 お寺門前のお店では、たいてい白い格好をしていると「どうぞどうぞ」とお茶などを接待してくれます。断るのも不作法とガイドブックには書いてありました。で、お茶だけ飲んで「ハイ、ごちそうさま」も、もちろんOKなのですが、どこの門前でも、売られている餅や団子のおいしいこと。霊場巡りの楽しみの一つとなってしまいました。

四国巡礼は、江戸時代から本格的に整備されたのですが、当時の道しるべが今でもいたるところに残っています。


79番天皇寺すぐ近くの、霊水と言われる水で作られるトコロテン屋を発見。酢醤油で食べるのも良いですが、おすすめは、このきなこと黒みつかけ。

79番天皇寺。崇徳上皇がこの地で亡くなられたためにこの名がついたそうな。
80番国分寺。とてつもなく大きな寺だったことを思わせる境内です。

 さて、讃岐と言えば”うどん”。有名店では、土日になると県外客の行列がズラリ。いまだにブームが続いているのですが、平日だと列を作ることもなく、地元の人もすぐ食べられる平和な状態に。


坂出の「がもう」にて、昼食。モチモチ系の麺とイリコ出汁がとっても好みなのです。素うどん一杯100円。あげ70円とリーズナブルです。

 信号機の数よりうどん屋の数が多いと言われる、讃岐のうどん業界。たった一杯100円のうどんでも、手を抜いて味を落とすと、舌の肥えた地元客の足が遠のいてしまいます。いつも真剣勝負なんですね。
 だからおいしいうどん屋を探す時は、「お昼時に地元客で繁盛している店」を、選ぶと良いでしょう。



ちょっと一服・・・(コマーシャル)
今シーズン、鹿革を用いたウインターモデルとして初めて発売したPG-29D。すごく柔らかいのが自慢のモデルです。使われる革は希少で、今シーズンの革の入荷もいよいよ最後になりました。とっても高価な物なので、特別に箱入りでタンナーから送られてきます。



81・82番のある五色台は、みかんの産地。あちこちで収穫の作業をしていて、格安で譲ってくれます。タンデムシート上のバッグにめいっぱい詰め込んでもらって200円也。

81番白峯寺。五色台の白峯山にあり、崇徳上皇ゆかりの寺。
82番根香寺。山中にあり、境内は、大きな樹木で覆われています。
83番一宮寺。高松市南部の田園地帯にある寺。

 五色台を抜けると、これからは地元の街「高松」。
 これまで遍路旅の人々を見ても、当たり前のように日常の中にとけ込んでいたので、何も感じることはなかったのですが、これからは、「ゴール目指して、一心不乱に歩んでいる」自分自身の今の姿と置き換えて見ることができるようになるかもしれません。
 
 高松市内を抜け、一瞬屋島の麓にある自宅に立ち寄って、道中買った「みかん」や「おはぎ」を降ろして、有料道路を登っていきます。

84番屋島寺。鑑真が建てた由緒ある寺。眺めも良いところにあります。
85番八栗寺。境内の背後にそびえる峯にちなんで五剣山とも言われます。
86番志度寺。奈良興福寺を建立した藤原不比等が建てた寺。
87番長尾寺。源義経の妾静御前にゆかりのある寺です。

 というわけで、残すは88番大窪寺のみ。夕方近くになりましたが、今日結願(88か寺を参拝し終えること)するために、徳島県と香川県の県境に近い山中にある寺を目指します。


 最後にたどり付く大窪寺では、多くの遍路を終えた方々によって奉納された、菅笠や金剛杖が迎えてくれます。そして、ついに四国遍路最後の参拝をすることができました。

 一年前から、ここ大窪寺にたどりつく自分自身の姿を夢見て、「一体どんなゴールが待ち受けているのだろう」とワクワクしていたのですが、それは意外にもあっけない結末。
 そこに何か特別なことがあるわけでもないことを、もちろん知ってはいるのですが・・・。「本当は誰でもいいから僕のことを祝福してくれないかな」という感じ。

 四国遍路を終えた人、みんな同じことを考えるのかもしれません。
 巡礼を終えてすべてが完結する訳でもなく、誰もが達成感を得られる訳ではない。そして、明日からまたこれまでと同じ日常が始まるという現実。

 そんなことを考えさせられました。
 

スタンプ帳は、最後の大窪寺のサインを入れて完成。壮大な”大人のスタンプラリー”でした。でもまだ一番最初のページに高野山のスタンプを入れるところが残っています。

 次回は、今回の「二輪で遍路旅」のまとめも兼ねて、奈良・高野山へ行こうと思っています。道が凍ってなければいいのですが。








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