2012年9月12日 担当 屋島工房 尾原

グローブのラインナップは、ここ数年大きく変わることなく推移しています。一見変化の無いグローブですが、工房では、目に見えない改良を続けています。それはより満足度の高いグローブにするため。小さなことにも、こだわり続けています。

 よく工房では、お客様のグローブを見せてもらう機会があります。同じ色・同じ品番のグローブでも、僕が見ればそのおおよその製造年式がわかります。それは、少しずつですが仕様が微妙に変わっているため。よりよいグローブのために今でも変化は続いています。

最も変化が大きいのが革。基本的な仕様は昔も今も同一なのですが、そこはやはり生き物。全く同じ革は存在しないですし、製造ロットによる変化も避けられません。たとえ同一タンナーの仕事でも、革の感じは、微妙に変わるものです。  

手首をぐるっと一周するゴム入れ。単なる手首の絞りと思われているかもしれませんが、ゴムの入れ方一つで、操作性が大きく変わります。甲のほうがゴム入れの本数が多いのは、グローブの中で、手が遊ばないようにする役割があります。それと万が一の時の、グローブ脱落防止の役目も。革の厚み・硬さによって、微調整が必要です。 

手の平側には、指またに水かきがあって、多くの人は手の甲に向けて水かきが手首に向けて下がっています。水かきに革が当たり過ぎると痛いですし、当たらないとフィット感が悪くなります。パターンの改良で、バランスの良い所を模索しています。
 

親指だって、今のままでいいわけではありません。ハンドルの垂れ角一つで、親指の場所は微妙に変化するものです。今はどんなバイクにでも、親指の動きを妨げないよう、指そのものを大きく作っていますが、決してこれで正解ではないとと考えています。

グローブの裾の長さや、調整ベルトの形状は、基本的にはペアスロープのジャケットと相性が良くなるよう作っています。ただ、当然他社のジャケットにも使われますので、より多くのジャケットにも合うよう、なるべくアジャストの範囲が広がるよう、考えています。
 



 
基本的にウチのグローブは、手の力を抜いた状態。つまり軽く握った状態が標準になるよう作っています。
 もちろん、指をピンと伸ばしたままや、グーの形でも作れます。例えば人差し指や中指を伸ばしたままで、あとは握った形のグローブにすることもできます。
 ただ、そうしてしまうと、万人向けでなくなり、安全にも支障があるので、現在の形状に落ち着いてはいます。ただ、今後仮にAT車が主流になって、左手のクラッチ操作が必要なくなったら、左手だけグーで作るのもありかもしれません。現状がベストとは、必ずしも言い切れないのです。

 今でも、当たり前ですが自分の作ったグローブを使って、ツーリングに出かけています。そうすると時々「あれ?」と感じる疑問や、気づきに出会います。それを一つ一つ解決し、改良に続けていくのが僕の仕事だと考えています。もちろん格好いいデザインのグローブを作るのも大切ですが、今あるものをさらに熟成させるのも地味ですが、必要な仕事と考えています。

 それと、もうひとつ大切なのが、お客様からのフィードバッグ。
 屋島工房では、お客様のグローブの状態をなるべく見るようにしています。どんな使われ方をして、どんな革の傷みが発生しているのか、そして使われてのご感想とか。
 なるべく多くの情報をまとめて、次の物づくりに生かしていこうと考えています。

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