2010年9月10日 担当 尾原

2010年秋、これまでのラインナップとくらべると、少し異色のアイテムが加わりました。それは「エルク」。フィンランドエルクの、他の素材を圧倒するような素材感を大切にし、誰もが味わったことの無い、全く新しいグローブが出来上がりました。

 フィンランドエルクとは、北欧を中心に生活するヘラジカの仲間です。

 ヘラジカとは、世界でも最も大きな鹿の仲間で、頭の角がヘラ状になっているのが特徴です。北アメリカでは、ムースと呼ばれていて、当地でエルクと呼ばれている物とは種類が異なります(北米のエルクは、ワークグローブなどによく使われています)。

 基本的にエルクは野生動物で、流通する量が少なく、なかでもフィンランド・エルクは希少な皮革の一つと呼ばれています。


半裁(背中で半分に割った革。右が頭で左がオシリ。下に突き出た部分が足。
見ての通り頭や足、腹の部分などはシワや汚れが多く使えない。

 もともと、高級な鞄とか財布によく使われる素材で、厚みがありながらも、しなやかで柔らかい独特の風合いがあるのが特徴です。

 表面はスベスベ吸いつくようなタッチをしていて、思わずほおずりしたくなるような・・・感触です。
 また、ところどころ荒々しいシボ(表面の模様)をしている所もあり、全く同じようなシボを配したグローブを作るのは、非常に困難です。言い換えると同じグローブが二つと無いということ。一双一双に個性が現れます。

 厚みは、普通使うのが1〜1.5mmの革に対して、このフィンランドエルクは3.5mmもの厚みがある極厚の革をあえて使っています。
 
 
下の黒い革が、弊社のニュージーランド産鹿革。この鹿革でさえ、ライディンググローブの中では厚手とされているのに、さらに三倍近い厚さがあるのが特徴です。

 ただ、この革を平側までに使うと、今度はさすがに手が曲げられなくなってしまうので、平側には鹿屋島等と同じく、柔らかさには定評のニュージーランド産ディアを用いています。

茶色の濃い部分がニュージーランド産ディア(鹿革)。厚みは1.3〜1.5mm。平アテなどは、これまでのデザインを踏襲し、限りなくシンプルなグローブを追求しています。

 手を入れて握ってみると、何かとっても厚いものに包まれているような安心感があります。床(裏)の毛も緻密で手触りがとても良いのが特徴です。
 かといって、少々厚さこそ感じるものの、操作性に影響するほどではなし。使い勝手のいいグローブに仕上がりました。

フィンランドエルクに配されるのは、手首に沿ってはめられる飾りステッチだけ。焼印は厚みがあるので、かなり凹んだ仕上がりになっています。

 フィンランドエルクならではの感触を味わってもらうために、甲側のデザイン的要素をできるだけ省きました。そう、この革のシボの感じこそがグローブのデザインとなるように・・・。

お願い・・・フィンランドエルクは、野生の生き物です。森の中を駆け巡る間に、体は傷だらけになります。
強度に影響する傷や、あまりにも大きな傷は取り除くとしても、小さな傷や、銀(表面)の小さな剥がれ、斑点などを除いていると、グローブを作ることができません。他の革で作るグローブの製作の基準とは少々異なりますこと、そして野生生物を使った物づくりでありますこと、あらかじめご了承下さい。

 荒っぽさと繊細さが同居する「エルク」。その自然素材が持つ独特の風合いを、ぜひ手にとってお試し下さい。


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