戻る >>


温泉を、より楽しむための基礎知識をご案内。知ることで、さらに癒やされることでしょう。
text:三橋弘行
illustration:藤井美智子



日本には「温泉法」がある。それによる温泉の条件を簡単にご案内しよう。
●地中からの源泉温度が、25℃以上であること。
●19種の特定の含有成分のうち、1つ以上が規定値に達していること。

以上どちらかがあれば「温泉」。つまり温度か成分かでいたってシンプルな条件ですね。


[温泉のメカニズム]
温泉は「火山性温泉」と「非火山性温泉」で大別される。火山性はマグマの影響で熱せられた温泉。非火山性は間接的に(冷えきっていない)マグマの影響を受けた温泉や、地中の圧力で温められた温泉。

湧出する温泉そのものにはおもに二つの種類がある。ほとんどは、雨水や雪解け水が地下に浸透し、長い年月を経て再び地上に出る温泉。これは蒸気やガスも含む。もう一つは太古の地殻変動によって海水が閉じ込められたもの、これが非火山性の「化石海水型」。およそ一千万年も前の海水ですぞ。
ところで温泉法の二つの条件に当てはまる現在の「海水」は温泉ではないのか? という疑問が残るだろう。しかし温泉は「地中から湧き出ること」が条件なので除外されるのだ。



温泉には含有成分やその濃度等によって10種類に大別される泉質がある。そしてそれぞれカラダに効果的な泉質別適応症が・・・どこか悪いところがありますかな?
昔の人々は当然ながら化学成分など知らずに浸かり、病を治したと言われる。数百年前には負傷した兵の治療に温泉を利用したと伝えられる。しかし現代は医学的見地で効果が立証されている。適応症を知っての温泉選びは健康によいのだ。




温泉の湯船で気持ちよさそうに「あ~極楽、極楽」という快感とも思える言葉をよく耳にする。「極楽」がついクチに出るのは、温泉地周辺の風景を楽しみ、宿の美味しい食事(酒も)を堪能……それらの環境で温泉がさらに癒やし度を増幅さるのだ。


日本各地には「美人の湯」を謳う温泉は数多い。そう宣伝すれば多くの女性が訪れるからだ。しかしほんとうなのか・・・?
温泉成分によっては、肌の余分な古い角質を取り、潤いを与えてツルツル肌にしてくれる。それに浸かればあなたも美人、と言いたいところだが、正確には「美肌の湯」と考えていただきたい。とはいえ美人になれる……と思う心が大切。



サイトでご案内の温泉宿は、宿の一部の湯船を除いて全て源泉かけ流し。その中でもいくつかの種類があるのでおさらいしておこう。


●源泉かけ流し
○加水あり・源泉かけ流し 高温の源泉に湧水等を混ぜて減温。
○加温あり・源泉かけ流し 源泉湯温が低く、加熱機器で適温にする。
○加水なし・加温なし・源泉かけ流し 源泉が適温であったり、工夫により適温にして湯船に入れる温泉。これは100%源泉かけ流し、または完全放流源泉かけ流しと言われる。

●循環ろ過式 源泉湯量が少ない湯船の特徴で、ろ過をさせながら湯船の温泉を循環させている。温泉ではないがプールや一般銭湯も同じ方法だ。その際、衛生を保つために殺菌消毒として塩素を入れているが、近年は源泉かけ流しであっても条件によっては塩素殺菌がある。



湯に色が付いているほうが、温泉効果が高いのではないか、と思う人が多かろう。しかしそんなことはない。そもそも源泉から湧き出る温泉は、ほんの一部を除いてすべてが無色透明なのである。にごる理由は、空気に触れて酸化し、化学反応を起こして変色する。また光の影響も。


そして日本にはさまざまな色のにごり湯がある。ホワイトにオレンジにイエロー、グレーにブラックにブルーにグリーン等々。清らかな無色透明の湯もよいが、にごり湯も魅力的である。



マナーを守れば、みんなが楽しく過ごせる。どうか心得てもらい、温泉を楽しく浸かろうではないか。

〇 かけ湯
衛生のためにカラダを洗い流すことが一つ。そして温泉の泉質と温度にカラダを慣らす意味がある。

× タオルを湯船に入れない
湯を汚すので湯船にタオルを入れてはいけない。もちろん下着のままも水着もだめ。

× 大騒ぎ
大声を出して騒ぐのはマナー違反。泳ぐのもやめよう。

× 写真
大きな湯船を撮りたくなる気持ちはわかる。しかしカメラを持ち込むことが良いとは言えない。近年では写真や動画撮影のトラブルやマナー違反のため、撮影禁止の湯船が多い。



お待たせしました、では混浴の話。
さてその湯船、厳密に言えば基本的に混浴は違法なのですな。でも現存している。そのわけは「既得権」で守られているのだ。
 その地域の風習などで昔から続いている混浴の湯船は、今でもその営業の権利を得ている。ただし新規に混浴はできない。いちど廃業したら復活もできない。なので混浴は徐々に減っているというのが現状。

[混浴のマナー。もちろん男性人の。]
●視線を女性に向けない
●自分のカラダを見せない
●声をかけない、ナンパしない
ただし女性から声を掛けられたら無視するべきではなく臨機応変で紳士的な対応を。

※女性の場合、タオルまたは湯あみ着の使用を認めている湯船もあります。

 混浴の減少は、温泉宿の廃業だけではない。近年は混浴風呂でも板で囲った目隠しや、湯船に塀を建てて男女別としたものもあり、昔ながらの混浴風情は失われつつある。そして女性専用時間をもうけている湯船も増えている。それらは温泉に対する意識の変化もあるが、むなしいかな、一部の男性諸君の行いも、おおいに原因がある。
混浴の湯は歴史ある名湯の揃い踏みである。誰もが気持ちよく浸かれるために、どうか秩序を保っていただきたいものである。




以上、ものすごく簡単に温泉マメ知識の基礎編をご案内しましたが、最低限、これを理解していただければサイト掲載の各宿の温泉を、より理解できることでしょう。そして浸かりに行きたくなることでしょう。こうしてサイト制作している私自身が、また行きたくなったくらいですから……。


<< 戻る