文:三橋弘行 写真:杉本圭 取材日:2016年10月6・7日
[ モーターサイクリスト誌連載 2017年 2月号]





 大分県の県境に近いわいた温泉郷は、いたるところで湯けむりが上がる。この地域は、地下の高温のマグマが温泉を沸騰させ、蒸気となって地上に出ている蒸気造成泉だ(由布院温泉と別府温泉も同様に多い)。
 わいた温泉郷には隣接した6つの小さな温泉地があるが、岳の湯の集落を通れば、そこらじゅうから湯けむり。取材は10月上旬の暖かい日だったが、気温が低ければ真っ白な蒸気で、さぞ視界が悪かろう。道路には「蒸気に注意 点灯せよ」との看板があるくらいだ。

 目的の「豊礼の宿」に到着。ここは素泊りの設定だ。その料金はリーズナブルで、平日は1泊4000円より。それで素晴らしい青い温泉に浸かり放題なのだからありがたい。では食事は?・・・これもいっぷう変わった方法である。


豊礼の宿。この敷地内にも湯けむりが上がる。






宿の露天風呂の湯の色はコバルトブルー、、、と言ったら語弊がある。宿の主人が語るには「ホワイトブルー」だ。しかしそれは季節によって、日によって湯の色は変化する。時には限りなく透明なことも。
なおこの宿は、立ち寄り入浴としても温泉を存分に楽しめるよう、貸切り半露天風呂が17か所もある。これがまた変わっていて、コインを投入すれば温泉がドバーと出てくる仕組み。妙な方法だが、わいた山を望みながら浸かるその湯船には、癒やされると言えよう。

[ 豊礼の宿の湯]
ナトリウム−塩化物温泉
ペーハー8.53 アルカリ性 源泉温度95.7℃
源泉湧出量 117〜125L/分(季節によって変動)
加温なし 加水なし(夏季は減温のため微量加水) 
自家源泉掛け流し 掘削自噴 蒸気造成温泉
溶存物質 2805mg/kg
浴室:男女別露天2 貸切風呂17
取材日:2016年10月6・7日




素泊りなのだから夕食は持参するか、もしくはここの売店で食材を購入して調理するかの方法しかない(近くに飲食店もない)。その選択は調理するほうを推薦したい。その名は「地獄蒸し」。これがまた日常では絶対に味わえない特殊な夕飯になるのだから。。。

1.売店で、玉子、イモ、フランクフルト、鶏肉などを購入。一人千円程度でよいかも。
2.温泉蒸気の蒸し焼き釜に、購入した食材を入れる。その時間は売店に表示アリ。※食材は持参してもよい。
3.宿の食堂で食べる。美味い。(カニは隣のオジさんから頂いた)。炊飯器もあり。

調理するエネルギーは100℃に近い高温の温泉蒸気だ。食堂には調味料もあるが、絶妙な温泉スパイスが食を進め、ビールがこれまたうまい。

なお、朝食は前日に持参するか、または朝から営業している近所のレトロな岡本とうふ店(朝からなのは当然か)がお薦め。なかでもとうふ定食はボリュームたっぷり。





若い頃は弊社のある東京大田区に住み、某都知事の事務所で働いていたという豊礼の宿の主人。温泉宿の経営者としてはこの経歴も変わっているが、この宿ができる前のこの場所で、温泉蒸気をエネルギーとしたプラスチック工場を親子で営んでいたというのだから、これも驚き。さまざまな事に挑戦するアイデアマンである。・・・最初から温泉宿にすれば、と筆者は思ったが、いろいろと都合ってものがあったらしい。




にごり湯はどこも同じようなことを言えるが、特にここの湯の色は時の運。いつでもホワイトブルーだとは限らない。しかしどんな色に当たったとしても、この湯の泉質は素晴しいのだ。

料金は素泊りひとり4000円〜(2名1室諸税込)。全11室。平日は一人宿泊も可。立寄り入浴:露天大浴場は500円 8:00〜20:00、完全入替え制コイン式貸切風呂は800〜1500円/1時間

わいた温泉郷 豊礼の宿 公式HP >>

次回、「にごり湯 銭湯編」・・・

 東京都品川区 
武蔵小山温泉


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