文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2016年5月9・10日
[ モーターサイクリスト誌連載 2016年 8月号]




円形の利尻島。55キロの外周道路からは、ほぼどこからでも利尻山が見える。

島全体が溶岩で形成されている。遠くに見えるは礼文島。

よく整備された道道から脇道に向かえば、のどかな海岸線あり。

利尻島へ渡る基本ルートは、稚内からのフェリー、、、なのだが。


プライベートな旅とはちがい、取材と言う限られた時間制限の為、東京羽田から新千歳空港経由の乗り継ぎジェットで利尻へ。飛行時間は両方合わせても2時間半程度(帰路はプロペラ機の丘珠空港経由)と近い、ではなくて短時間で着いてしまう。バイクは利尻町役場の方からお借りした。今回の取材は利尻町の協力で可能となったのである。
利尻島の象徴は、島の中央にそびえる利尻山。そして食材の代表格は利尻コンブとウニ、その他、北の海の海産物は豊富にあるが、特にウニは絶品だ。東京で食べる(高額なのでめったに食わない)ウニとは別物である。

神居海岸パークにてウニ採り体験。

採ったウニは利尻海苔の軍艦巻きでいただく。

エゾバフンウニとキタムラサキウニ。

ウニの赤ちゃん。ウニ種苗生産センターにて




ホテル利尻:フェリーふ頭のすぐ近くにある、利尻町の町営の近代的なホテル。単なる日本最北端の源泉かけ流し宿ではない。ここに思いもよらぬ素晴らしい泉質の温泉があろうとは、、、。





海風から波の音が聞こえてくる露天風呂は気持ちいい。そして内風呂には、源泉が二手に分かれて注がれる大小二つの湯船、その円形小さ目のほうが源泉かけ流しである。
ではなぜ全てが源泉かけ流しではないのかは、通常なら湯量が少ないから、と答えるが実はそうではない。公式の湯量表示は80ℓ少々だが、フルに注げば約700ℓと膨大な量だ。しかしそれをしないのは、源泉温度が33.4℃と低く、加温しなければならない。よって燃料費がかかる・・・という町の大人の事情がある。
唯一の源泉かけ流し湯船は、約33度とぬる湯である。しかしこれがまた気持ち良く癒やされるのだ。加温なしで十分いい。

[ ホテル利尻の湯]
泉質:含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉
源泉本数:1 掘削自噴 湧出量(制御):84.1 ℓ/分
源泉温度:33.4℃ pH 6.66 中性 溶存物質:12,150mg/kg
内湯『金の湯』と露天は加温循環ろ過、加水無し
『清涼』は源泉かけ流し、加水無し・加温なし
浴室(男女別):内湯2 + 水風呂、露天風呂 1
取材日:2018年6月4~6日

[温泉成分について追記]
少々の温泉知識がある方なら、上記泉質名を見ただけでも、そうとうなものだと感心するだろう。肌によい炭酸水素イオンの数値も溶存物質の数値もケタ違いに多い。さらに、泉質名に隠された他の温泉物質や特徴が豊富にある。これほどまでの泉質は、全国でも希少中の希少なのである。
ではちょっと遊び心の実験をお見せしよう。
左は源泉、右は水道水。6月4日:利尻 10日後の6月14日:東京にて
左写真、にごり湯といっても、源泉は水道と同じく無色透明。
右写真は、水道水と利尻温泉の源泉にそれぞれクギを入れた10日後の状態。水道水のクギはサビて赤茶色、そのサビが沈殿もしている。一方の右側源泉のクギは10日経ってもピッカピカだ。利尻温泉の源泉は酸化させにくいのだ。
これは何が言いたいか・・・ 地球上の空気や液体は、物を酸化させる。ちがう言い方をすれば劣化(老化)させる、腐らせる。人も同じく身体は酸化する。ところが利尻温泉のような湯に浸かった場合はどうだろうか。クギがサビないように、肌の老化を防ぐのではなかろうか。これが美肌効果と言われる由縁であろう。
このような効果は『酸化還元』。それを医学・化学的に調べている機関もある。温泉地では、このにごり湯編 第5湯「高湯温泉」がかなり積極的で、筆者は取材時にも同じ実験をしている。ちなみに高湯温泉も利尻温泉も、源泉のクギは3ヶ月経過してもほぼ錆びてはいない。
なお、クギを入れたペットボトルは飛行機で持ち帰るのはいろいろと困難なので、輸送には工夫を強いられた。




失礼ながら、公営の宿の食事には期待していなかった。がしかし、ここは北の海産物が豊富な島なのだから、くつがえされる。
通常よりランクアップした夕食のメニューは、ウニがぜいたくにも5個分ほど入った土瓶蒸しが追加される。そのダシの味たるや、とんでもな~~~く旨い。そりゃそうだ、ウニはあの高級な利尻昆布がエサだもの。マツタケの土瓶蒸しには申し訳ないが、格がちがうというか。
ただし、ウニの漁期と関連して6~8月の期間限定料理なのであしからず。




ホテル利尻の総支配人である。生まれも育ちも利尻島で、実家は漁師、ひと言ひと言真面目に冷静に語る生粋の島の人。
この宿は町営、元は利尻町のとある部署の職員であったが、辞令で宿を任されることになったという。「宿の運営も温泉知識もなかったもので、かなりとまどいました」とは正直なきもちであろう。
温泉の事だけなら少しは知識のある筆者が・・・実は御宿の泉質は日本で希少な、ものすごい湯で、あ~で、こ~でと説明すると、ニコニコと真剣に聞いてもらったのが印象的であった。
ちなみに、総支配人が正直な人なので、筆者も正直に申せば、ホテル利尻の公式サイトはまったく面白くない。ビジュアルも内容もしかり。あとで下段のリンクで皆さんに見てもらえばお分かりになるだろう。(こんなこと書いて大丈夫か?)
しかしそんなイメージと実際とはちがう。遊び心は控え目の公営の宿だが、その魅力はおおいにあり。





利尻島は、その景色、海産物の味覚、そして希少な泉質の温泉と、おカネと時間を掛けても訪れる価値はあるだろう。また、フェリーで40分少々の隣りの島『礼文島』に寄るもよし。どちらの島も魅力たっぷりだ。

宿泊の営業期間は4月~11月末、そのトップシーズンは6月と7月。料金は月によって異なる。利尻島の中でも人気のあるホテルだが、8月(お盆を除く)は意外に穴場か。

料金は1人平日8,800円~(2名1室諸税込・1名宿泊可、シングルルーム) 全71室 立寄り入浴:550円(通年営業)露天風呂は11月~4月休止

ホテル利尻 公式HP >>






[ 追伸・・・居酒屋かもめ にて]


左から、筆者、利尻町のKさん、そして居酒屋の陽気な主人

連泊したホテル利尻だが、1泊は朝食のみプランにして夜はドゥカティをお借りしたKさんと居酒屋で夕食を共にすることにした。
Kさんは弊社ペアスロープのお客さんで、利尻町の職員というお堅い仕事だが数少ない利尻のバイク乗りである。実はホテル利尻もウニ種苗生産センターも神居海岸パークもKさんからの紹介。それら全てが利尻町営なのだから頼もしい助っ人である。

〝居酒屋かもめ〟もKさんにご案内いただいた。地元の居酒屋は地元の呑んべえに聞くのが一番だ。おまけにこの店の主人が利尻町観光協会の会長ときてるから興味深い。
主人はでっかい声を張り上げて次々と料理を運ぶ。出てくるのは東京でお目に掛かれないものばかり。いや、もしあったとしても、値は高く鮮度は低く、であろう。
「旨いなあ」「ほんとすげぇ旨い」、出てくる言葉は「旨い」の連発だ。これは参った。その旨さに降参。

[居酒屋かもめ]
利尻町沓形の街にある数少ない居酒屋の中の1軒。ホテル利尻からは徒歩3分程度。営業時間は18時~20時30分とひじょうに短いので開店直後に行けばよし。予約がベスト。







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