2014年8月4日

 信州の南の地域、南信は農作物だけでなく、もの作りも盛んだ。宮内産業さんの次は、昨夜、いっしょにメシを食った、もう一人の代表の革製品製作工房を訪問する。


いい仕事してますなあ。

 代表は「モモセ」さんという。もも、桃?、よほど桃に縁があるのだろうか、とにかく弊社のもの作りに協力いただいている。


 女性の前で仁王立ちして作業を見つめるモモセさん。そんなおっかない顔してにらんでたら手が進まないのじゃないのかな、と思うが、女性はいたって冷静に作業をしている。

 ここでは弊社のコードバン小物を仕上げている。宮内産業さんに発注したペアスロープ指定のコードバンが東京の弊社に送られ、それを選別し、裁断指定なども付け、その他の材料とともにモモセさんの工房に送り、こつこつと作り上げてもらう。
 思いついたように「モモセさんの縫製作業が撮りたいなあ」と頼めば、「えぇぇぇ〜〜〜?」なんて言いながらもミシンに座る。今回はストロボを2個持ってきてるので、1個を古山に渡し、もう1個は女性スタッフに持ってもらう。

「おい、カメラのレンズに光を向けてんじゃねえよ、もっと下だよ下、モモセさんの手先に向けてくれよな!」 「はいお嬢さんは、もう少し右でお願いしますネ」・・・野郎と女性では当然ながら違う。これ常識。


 「表情が硬いよモモセさん、もうちょっとリラックスしましょうよ」なんて言うが、信州の男がニタニタして仕事などせん!と思っているのかどうか、撮った写真がこれ。ま、真剣さは十分に表現できたが。
 ところでモモセさんが縫っているのは弊社の“コードバンとんぼ印伝長財布”・・・極少限定品。今回もたった5個しか作らないのだが、「モモセさん、もう少し多く作ってくれませんかねえ」に、「だって材料が足りないじゃないですかぁ」。そうなのだ。宮内産業さんからのコードバン入手量は非常に少なく、また奈良県からの印伝(鹿革にうるし塗り)の弊社在庫にも限りがある。それにその他の秋の新製品に材料を回さなくてはならないし。

 それではこの工房から生まれるコードバングッズを少しお見せしよう。(やはりフライングしてるけど)






PHOTO:坂上修造



コードバンが輝く、長財布と二つ折り財布(新製品)。






サイドの美しい仕上げ。





コードバンと印伝の融合・・・こうなれば作品の域




 コードバンは「革の王様」 「革の宝石」と言われるだけあって、それはそれは素晴らしい革素材。良い財布にはたくさん入ってくる・・・というのはほんとですよ。もちろん入ってきたら出さなくちゃ。おカネは天下の回り物ってね。



[ここだけの話、その3] ・・・コードバン財布

馬ジャン用のソフトホース馬革と同じく、コードバンも宮内産業さんから調達している。そのコードバン、かなり高額。それがどれほどかといえば、弊社革ジャンの牛革の10倍近いと表現すればお分かりいただけよう。しかも近ごろ価格上昇、そしてしかも入手困難ときている。
コードバンの部位は馬一頭で二枚、その一枚で長財布が1個か2個しか作れないのだからとても量産には向かない。コードバンx印伝のシリーズなどは、年に2〜3回、各数個の気まぐれ生産にすぎない。
・・・ということで「どうぞ買っていただきたい」とは申しませんが、その質感に私も惚れたコードバン財布である。「ほしい!」と思ったら迷わず速攻で。(2014年の秋の第一回販売は、9月11日の予定)

※コードバンアイテムは2014年9月10日頃に公表します


・・・「モモセさん工房」と「ペアスロープあさま工房」の作りのちがい。

 サイフならば弊社あさま工房で作れば良いではないか、と思っている方も多かろう。それは工房の技術のちがいで、サイフというひとつのもの作りも「餅屋は餅屋」があるのです。

[モモセさん工房] 裁断機による切りっぱなし製法。そのサイド仕上げ技術が自慢。 [あさま工房] 表側の内側も全てが「ヘリかえし」。また手裁断によるワンオフ作りも可能。

 “モモセさん工房”は、ヘリをかえす作りはやらず、切りっぱなし。とはいえその仕上げはには手間を掛け、美しい。
 対して“あさま工房”は、革の切り口を見せない「へりかえし」。この作りは繊細で精密だが、製作時間は長い。
 どちらの工房にも得意技があり、お互いの作り方はできない。だからサイフ製作は二つの工房に分かれるのである。
 なお、コードバンはヘリかえしには向かない革なので(無理したくない)、あさま工房製コードバンサイフの製作は今のところなし。(サイフ以外のグッズはあり・・・お楽しみに)






腹が減っては走れぬ。

 なんだかんだで昼になってしまった。モモセさんにどこか旨い飯屋がないかと聞けば、「そうさなあ、カエルを食わせるとこは夕方からだし、ハチの子はぁ、、、」。ゲテモノじゃなくて、フツーの旨いもんでいいのですよ!
 コードバンサイフ作りはアテにするが、飯屋探しにはアテにならないモモセさんなので、以前モデルの修一君に連れられた店に向かうことにした。

飯田市内の「天の雫(てんのしずく)」。

古山は天ぷら定食。 私は特大海老フライ定食。

満足な顔で店を出る。


 腹は減ってるし、まだ朝の転倒で落ち込んでいる古山だろうから、箸より長い私の特大海老フライをひとつあげた。するとニカッとして旨い旨いとぶつぶつ言いながら、ペロッと食っていた。
 もう仕事は終わりにした。これ以上すると、何しに来たんだか分からなくなるし、古山とて、せっかく三連休の休みをとったにもかかわらず、つまらんだろう。ならばワインディングだらけの山の奥の奥の涼し〜いとこに向かおう。そして旨い食材買って、豊丘村の武田家で晩飯のオカズ(酒のツマミ)にしよう。
 信号待ちで古山の表情を探る。へらへらしている。もう立ち直ったようだ。
 「これから、あの山を越えるんだぞ!」と指をさす山には、どんよりとしたダークグレーの雲がたっぷりとかかっていた。


いや〜な雲である。







[ここだけの話、その4] ・・・おまけ

ペアスロープでは創業以来“おまけ”も作り続けている。不定期であったり定期的であったり、、、ならば不定期かな。
2014年も秋用のおまけがある。それはコードバンをちょっと使ったグッズ。
このページで、コードバンは高額だの、入手困難だの、とご説明したのに矛盾してないか、と思われるだろう。でも使いたくなってしまったのだから仕方がない。

さて“おまけ”の入手方法は?・・・当サイトのメニューページでご案内。不足しそうになったら消去しますのでお早めに。


※おまけご案内サイトは2014年9月10日頃の送信予定です。


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