2012年8月22・23日

寄り道。

雨の四万十市を離れる。(フォト:坂)

海沿いの国道56号。(フォト:坂)


10キロも走れば雨は止む。(フォト:坂)

南の空には晴れ間が。(フォト:坂)

 大粒の雨が降りだし、トンボ撮りをあきらめた我らは、四万十市を離れ国道56号を東に走り、高松方面へと向かう。しかしちょっと走れば雨は止み、時おり太陽が顔を出す。なんと気まぐれな天気だろうか。

 56号線を1時間近く走って、道の駅“あぐり窪川”に着き小休止。すると尾原がニタニタ寄ってきた。
 「10年前なんやけど、漁港でイセエビ食ったでしょう。あれ、すぐそこなんやけど、そこで昼飯なんかどうでっしゃろか? イセエビ定食でも・・・」
 そういや思い出した。2002年の秋、海沿いの県道を走っていたら小さな漁港があり、そこで出会った漁師のご夫婦にタダで伊勢海老を食わせてもらったのだ。まあ尾原はきっと「天然ウナギを食わせてくれなかったから、代わりにイセエビを食わせろ!」と考えたにちがいない。それでもよい、じゃあ進路変更して寄り道、あの“志和の漁村”に伊勢海老を食いにいこうじゃないの。。。


国道から県道へ。

この道、ほんとに海に出るのかぁ?


急カーブ連続。

志和の漁村が見えた。





再会。

志和の漁村を望む(フォト:坂)

 国道56号から県道に入ると、薄暗く狭い山道。やがて視界が開けてくれば、眼下(といってもたいした標高ではない)に志和の漁村が見える。この風景、なつかしい。
 ふと不安になる。10年前、小さな漁村に1軒しかなかった、伊勢海老の味噌汁を調理してくれた喫茶店“なごみ”はまだあるのだろうか。そしてあの伊勢海老漁師の旦那と、奥さんのトミエちゃんは、まだ漁をしているのだろうか、、、? (※トミエちゃん:2002年の当HP紀行で、当時の石野ライターが気安くそう書いたので同じ呼び名で記載)






 山から県道を下り、漁村に入って少し走ると、やや老朽化しているものの喫茶“なごみ”はあった。店の前の駐車場にバイクを停めて、さっそく店内に入る。

“喫茶なごみ”のカンバンがなければ、ごくフツウの漁村の民家。

 店内に入ると10年前の、あの伊勢海老の味噌汁を作ってくれたオネエさんがおられた。
 「こんにちわぁ〜」
 「いらっしゃい〜」
 「おのぉ〜、ちょうど10年前にバイクで来て、伊勢海老の味噌汁と昼飯を頂いた者ですがぁ、覚えてますかぁ?」
 「あぁ〜〜〜、あの時の、、、覚えてますよぉ。というより偶然おたくのネットを見ちゃったから。そうだ、トミエさんを呼びましょう。漁師の。」
 「おっ、まだ伊勢海老漁師やってるんですね、、、よっしゃあ。」


喫茶なごみの店内。

なごみのオネエさん。
メニュー変わらず。でもレモンスカッシュは今日も無し。

注文した具沢山の冷し中華。なんとメロン入り。


喫茶なごみで調理して頂いた伊勢海老汁。マジで旨かった。(10年前の写真)


トミエちゃんに交渉中。(フォト:坂)
 伊勢海老が先かどうか迷ったが、我らはあまりにも空腹だったので、まずは軽く腹ごしらえ。メインディッシュはそのあとの別腹で。そしてささっと旨い食事を済ませ、アイスコーヒーなんぞをまったりと飲んでいるところに“トミエちゃん”が登場。
 「まぁなつかしい、よくまたここにぃ」
 「ハイ、忘れられなくて、またあの旨〜いイセエビを食いに来ましたぁ!」
 「あ〜ら残念ねえ、今、禁漁期間よ」
 ガ〜〜〜ン。な、なんということだ。せっかく来て“禁漁”?。聞けば9月15日から伊勢海老漁は解禁されると。だからその数日後においでと。でも満月の大潮の6日間は漁をしないので無いよ、と。とはいえ東京から900キロも離れているわけで、そう簡単にはまた来れないわけで、、、。
 さて、四万十の天然ウナギも、ここ志和の伊勢海老も食い損なっている尾原が隣りでションボリしている。可哀想だから私が究極の提案する。そして同時にトミエちゃんに交渉する。その案とは・・・



  この“浜買い”、ってやつ、漁協の許可なくいいのかな?とトミエちゃんに聞いたら、「そんなん、親戚・知人・友人はいいのよぉ」とのこと。おっ、親戚ではないけど知人・友人などと仲間に入れてくれたのは嬉しい。ではそのツーリング内容をざっくりとお伝えしよう。



[伊勢海老ツーリング] ・・・主催:屋島工房 尾原
香川県高松市を出発し、高知県志和の漁村に直行。“喫茶 なごみ”を貸切昼飯の後、漁師から格安で伊勢海老を浜買い。食ってよし、さらに家族への喜ばれる土産にもなる、価値あるツアー。


[日時] 2012年11月23日(金曜祝日)、雨天決行。
[参加費] 貸切“喫茶なごみ”スペシャルランチ ¥1800(?)。
 ※伊勢海老(半身)汁・ソフトドリンク付。
[参加定員] 20名まで(先着順)。
[参加車両] 中型以上のバイク(タンデム可)、クルマ不可。
[持ち物] クーラーボックスまたはスチロール箱。
[申し込み] TEL不可で参加費持参の上、直接屋島工房へ。
[参加条件]
1. 我らバイク乗りの為に漁師さんが伊勢海老を用意してくれるのだから、1匹以上の伊勢海老購入。(ていうか、買わないと損。なお3〜4匹以上の場合は先方にスチロール箱あり)
2. せめてグローブだけでも屋島工房製(ペアスロープブランドでも可)を装着して参加いただきたい・・・尾原への気持ちとして。

※以上はトミエちゃんち(伊勢海老漁師)および“喫茶なごみ”に了承を得ての企画だが、筆者が勝手に書いている部分も多いので、詳しくは屋島工房のサイトでご確認を(10月某日送信予定)。




 ・・・すごい裏技、なんというスペシャルなツーリングなのだろうかぁ、俺も参加してぇ〜〜〜!(でも東京から遠いんだよなあ)。
 だってねえ、伊勢海老ですぞ。伊勢海老ってのは超高価で、家庭の晩飯のおかずに出る代物ではないのですぞ。それが漁協・仲買人・小売店の中間流通をふっ飛ばして浜買いするのだから(少々反則ワザ)、これほんとうにお買い得なのですぞ。きっと家族も大喜びお土産、オヤジの面目躍進ってとこでしょうなあ。。。
(※個々に志和に行っても上記の浜買いは不可能です。あらかじめご了承ください)

交渉成立。トミエちゃん(左)と喫茶なごみのみどりさん(右)。

現在の志和漁港。港なのに海の色が鮮やかなブルー。10年前(2002年)にはこの岸壁で、トミエちゃん夫婦から伊勢海老の刺身をご馳走になったのだ。


志和漁港の隣の海岸にたたずむ筆者。そういえば10年前も同じライディングベストを着ていた。10年10万キロは所々傷んできたのでそろそろ新調しようか。(フォト:坂)

RVM-05 ライディングベスト:ケイタイ、サイフに小銭入れ、そして筆者はカメラのレンズも収納。ツーリングに便利な道具である。 RVM-05の詳細は >>





志和〜高松。

 禁漁期間のため伊勢海老は食えなかったけど、愉しいひと時を過ごした志和の漁村をあとにし、帰りは海岸線を走り、往路で市場に寄った土佐久礼を経由して高松へと向かう。










高松まで30キロ。





予定を変えて京都へ。

坂上カメラマンと尾原。

 高知県の志和の漁村から2時間半ほどで、高松自動車道の香川県のとあるパーキングに着いた。高知県は「雨のち曇りのち晴れ」と目まぐるしい天候でも涼しかったが、しかし瀬戸内海側の香川県のなんとクソ暑いことか。
 さてここで坂上カメラマンとはお別れ。氏は高松市内の実家に一旦寄り、夜中走って神奈川県の自宅に帰るという。今朝の四万十市から1000キロを走り続けるタフなオッサンだぁ。
 で、我ら夫婦坂組は・・・予定ではまた今夜尾原家に泊まり、翌朝、タンデムで京都、そしてカミさんは京都から新幹線、私は自走のつもりだった。しかしこの暑さは尋常ではなく、明日一日で高松から東京まで走る気力がなく、予定を変更して今からタンデムで京都に向かい、京都伏見店に泊まっることにした。

高松市内で尾原と別れる。手なんか振ってないで、ちゃんと前見て走れよっ・・・そう言ってる私は横向きでカメラのファインダーを覗き、前なんか・・・。


夕暮れ近くにタンデムで明石大橋を渡る。


 ほとんどが片側1車線対面通行の高松自動車道をだらだらと走り、大鳴門橋を渡って淡路島、そして明石大橋を渡れば本州、そしてこのクソ暑い中のタンデムは疲労限界で、水分補給とパーキングへ。
 自動販売機だ。小銭、あったかな、、、素晴らしいコインケースをライディングベストから取り出す。私は藍(あい)染め牛+トンボ印伝、カミさんは馬革+赤トンボ印伝だぁ・・・!


ニッポンの伝統文化たっぷり・・・馬革+赤トンボ印伝、そして藍染め+トンボ印伝のコインケース、共に3800円。藍の色って英語では “JAPAN BLUE (ジャパン ブルー)”というのですよ。




ゼファーからW650。
8月23日

左は昨年から長期滞在中の我が家の愛車、W650。

 尾原と別れた四国高松から3時間ほどで京都伏見店に着き、酒を少々飲んで爆睡。そして翌朝、店の畑に出たらスイカが。蔵から明治初期に作られた年代物のオケを引っ張り出しスイカと多量の氷を入れる。
 やがて店長の橋本がやって来て「暑いからスイカでも食うかぁ」と冷えたところで試食・・・・・こっ、これは、スイカの味がする甘くないスイカだぁ!。
 キュウリもトマトも大成功だったのに、スイカは失敗。これじゃあご来店のお客さんに出せん、と無理やり橋本に食わす。それでも余ってしまうスイカ。仕方がない、東京に持って帰って弊社職人たちに食わそう、と考えるが、さてどうやってバイクに積むか。。。

 午後2時、気分を変えてゼファーからW650に変更し、東京に向けて猛暑の京都を出発。カミさんは速くて楽ちんな新幹線だ。



スイカを積んで東京に帰るW650。






スイカはカミさんのヘルメットの中。

 東京に向かう2気筒のW650、4気筒のゼファーに比べるとペースは遅めである。高速道路は苦手というか、面白くもなんともない。やはり一般道を60〜70キロくらいで走っているのが気持ち良いバイクだ。トンネルの中の排気音なんて最高だしね(※社外品マフラー装着)。
 
 新東名に入り、陽が傾き始め、そしてじわじわと東京に近づいてきた。その直線ばかりの、W650には不釣合いの高速道路を走りながら思う・・・・・「いったい何しに来たんだろうか。遠く高知県のトンボ自然公園まで行って、雨に降られ、たいしたトンボ撮りはできずじまい。楽しみにしていた四万十川の天然ウナギも食えず、ならば伊勢海老、も禁漁期間でアウト。そしてバイクの後ろに積んでいるスイカは、、、スイカ味のする甘くないスイカ。う〜ん、人生も甘くない・・・」。


 しかし今回の二輪旅がつまらなかったのかと問われれば、いや、そうではない。あの美しいチョウトンボも撮れたし、土佐のカツオもたらふく食ったし、志和の漁師に解禁後の伊勢海老を送ってもらうことにしたし、それに・・・なんといっても往復2000キロ弱もの距離を、トンボのように前に前にと進むバイクに乗っているのだから、つまらないはずがない。ま、極楽トンボでしょうな。。。
By 夫婦坂




最終話は、出し惜しみしていた “トンボ撮り”をご覧に入れます。


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